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税理士コラム

ほろ苦い経験2016年03月01日

入社1年目の私には、ちょっとほろ苦い経験があります。担当先の帳簿をチェックして試算表を作成したり決算を組むと、最後に必ず税務署OBの税理士の点検を受けるのが弊社のルールでした(所得税担当2名、法人税担当1名、資産税担当1名の計4名在籍)。
それなりに会計知識は持っていたので、多少の自信はあったのかもしれません。ところが、点検で何度となく突き返されるのです。OB税理士からの指摘事項は、一貫していました。
・試算表や決算書に現金○○円とあるが本当に会社にあるのか確認したのか
・決算書の売掛金や買掛金は請求書と突合したのか、その後の入出金の確認は、計上もれはないのか
・商品在庫は現物を確認したのか
・固定資産台帳に載っている現物を確認したのか
・売上や仕入の相手先や具体的な取引内容は把握しているのか
会計の教科書的な知識しか持ち合わせていなかった私は、何故そんなことまで確認しないといけないのか、お客様に嫌がられてしまう、と腑に落ちずよく反抗的な態度を取ったものでした。

現場に入って分かること

その当時、嫌でいやでたまらなかったOB税理士の点検での指摘は1年間続きましたが、2年目からはパタッと無くなりました。
どれくらい経ってからか忘れましたが、ある時から、感謝の念が自然と湧き上がってきたのです。「帳簿上の数字の裏側にある取引の実態つまりはお客様の本当の姿を現場で把握すること、それが大事なんだ」、それを私に教えたかったんだ、と。
つい先日、新たにお付合いがスタートした情報処理サービス業のお客様に、弊社の元国税OB税理士2名(法人税担当と資産税担当)と共に伺い、初回のご挨拶と現況ヒアリングを、社長、総務統括マネージャ、総務マネージャ同席のもと実施いたしました。
約2時間をかけて、次のような内容を丁寧にお話しいただきました。
① 会社組織 … 組織図をもとに、各部署の責任者、仕事内容の詳細、主要取引先
② 組織体制 … 会議・委員会、組織体制
③ 人員構成 … 役員、正社員、パート、外注先
④ 各フロアのレイアウト … 間取り図をもとに各使用用途
⑤ 財務データ … 直近4期分の主要取引先別の売上推移、他主要な財務数値
⑥ 税務調査履歴 … 過去の税務調査における指摘事項
⑦ 株主構成 … 株主名簿を使い株主、持株数、持株割合
⑧ その他 … グループ会社、自社株の承継、退職金、決算対策など

会計事務所の思い違い

この度のやり取りを振り返ってみると、決算申告書、試算表、会計帳簿、領収書などの原始資料はさて置き、そのほとんどの時間を現場でしか確認できない企業の実態把握に費やしていました。実は、それが主目的だったのですが…。
会計事務所のスタッフは、どちらかというと決算申告書、試算表、元帳、領収書、請求書、預金通帳、売上帳、仕入帳など、会計書類をいの一番にチェックする傾向にあります。そして、それを得意としています。勿論、税務会計サービスの主要部分であることに間違いはありませんが、それだけだと企業活動の表面だけを数字からのみ捉え、実態を無視する結果を招く恐れがあります。
まさに、入社1年目の私がそうであったように、実態を無視し会計知識優先で帳簿データのみを見ているのと同じです。

数字の裏側にある本当の姿

「帳簿上の数字の裏側にある取引の実態を現場で把握すること、それが大事なんだ」、あの時の税務署OB税理士の苦言が蘇ります。
お客様企業と税理士は、一度お付合いがスタートすれば、5年、10年、15年と、原則として継続するものです。だからこそ、会計書類に代表される表面的な数字だけでなく、企業実態というその裏側にある本当の姿も把握したうえで接する必要がある、と考えます。さらに、会社のみならずオーナー社長個人やその家族の実態を把握することも、不可欠です。
そうすることで初めて、表の数字と裏の実態がマッチし、本当にお客様が求める税務会計サービスに近づくことができるのではないでしょうか。今回の初回面談で行った現場での実態確認調査は、正にその第一歩なのです。
入社1年目に出会った税務署OB税理士の方々に対しましては、今となっては、感謝の念が募るばかりです。

代表社員・税理士 佐藤 修一

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