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税理士コラム

調査官のヒアリング能力2015年08月01日

これまでに、100件を超える税務調査の現場に立会ってまいりました。

よく新聞記事、ネットなどで脱税事件として報道される国税局の大がかりな調査やマルサの強制調査は別として、税務署による調査は、2人の調査官が2日間程度かけて企業の現場に訪問して実地調査するのが一般的です。

初日の午前中は必ずと言っていいほど、経営者である社長への概況ヒアリングが実施されます。様々なタイプの調査官に出会ってまいりましたが、「最初の30分」で、ほぼ間違いなく調査官の腕前を見抜くことができます。

勝手に喋らされてしまう

社長への会社概要ヒアリングを手短に切上げ、午前中からいきなり帳簿、領収書、請求書などの会計資料を見始めるようであれば、ほとんどの場合、大けがをする(例えば、多額の追徴税額が発生する)ことはありません。

一転、午前中に十二分に時間をかけ、会社概要は勿論、社長や家族の個人情報にいたるまで、様々な角度から気分を慨さないように上手に手際よく聞きだす、というよりは、社長が勝手に喋らされてしまうような調査官は、要注意です。午後から、しっかり的を絞り込んで効率よく調査を進めて行きます。

私が新米のころ、後者のような有能な調査官が、担当である私ですら知らない会社の詳細な業務内容、社長や家族の個人情報などを、次から次へと聞きだしてゆく様子を目の当たりにして思ったものです。「こんな業務もしていたのか、社長はこういう経歴の方でこんな趣味を持っていたのか、そしてご家族は…」、と普段私からは聞きづらいことまで、代わりにあらいざらい聞きだしてしまうのです。幸か不幸か、お客様企業のより深い部分までの理解が深まり、非常に勉強になるのです。

スタンスが180度違う

担当者としては、薄っぺらな理解しかしていないことに気づかされ、反省すべき恥ずかしいことではありますが、事実です。

会計事務所の担当者というのは、顧問料を頂いて税務会計サービスをご提供しているためか、自然に、知らず知らずのうちに、次のようなスタンスが身についているのかもしれません。「会社の内情、社長や家族の個人情報については必要以上に深入りしないようにしよう。あくまで、ご提供いただいた通帳、領収書、請求書などの会計資料を基に帳簿チェックや帳簿作成をするのが仕事なんだ」、と。つまりは、社長の話しや会計資料を100%信じる、「性善説」なのです。

一方、少しでも多くの税収を確保するのが本業の調査官は、社長の話しや会計資料はそもそも間違っているという、「性悪説」なのです。だから、有能な調査官になればなるほど、会計資料などそっちのけで、調査先企業の実際の商取引について、物・サービス・お金の流れなどを重点的にヒアリングし、不正経理や計算間違いを発見して行くのです。

私どもがお客様企業の会計資料を100%信用して仕事を進めるのに対して、税務調査官はそれを疑うところから始める、スタンスが180度違うのです。

昔取った杵柄

現在、私どもの事務所には、12名の元国税調査官が在籍しております。そして、「調査官のヒアリング能力」を業務に最大限活かそうと考え、2年程前から、新規のお客様企業に税務会計顧問サービスを開始するに当たり、会計担当者と元国税調査官がペアになって、社長様との初回面談及び会社概要の聞き取りを実施しております。例えば、社名の由来、客層、業界特有の取引内容、売上・経費の計上基準、事業方針、経営計画、税務調査リスク、弊社への要望など等…

会計担当者が遠慮して聞けなかった、あるいは、聞く感覚を持ち合わせていなかった会計資料の裏側に潜んでいる情報を、元国税調査官が昔取った杵柄で、上手に聞きだしていきます。結果として、会計担当者一人だけの力では及ばないお客様企業の真の情報を確認することで、日々の税務相談、帳簿チェク、帳簿作成、決算対策、決算処理など、正確性が増し、満足度アップにもつながるのです。

お客様企業に本当に必要とされる税務会計サービスをご提供し続けるために、そして税金に対する様々な心配事を払拭し安心をお届けするために、「会計資料だけを見るのではなく、なにより一番に、お客様企業と社長様個人をしっかり直視すること」、それを徹底していきます。

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