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税理士コラム

消費増税を痛感2015年07月01日

私は、日々の税務相談、会計データの報告、決算の事前打合せ、決算報告会等でお客様企業とお会いする時は必ず、担当スタッフに現況を確認したうえで、次の5つの会計データに目を通してから臨むようにしております。

・月間取引数、いわゆる仕訳データ数
このデータ数の月々の増減をチェックすることで、会社の商取引の異変を察知
・3期比較貸借対照表
会社の財産・債務の増減チェック
・3期比較損益計算書
会社の売上高・経費・利益の増減チェック
・主要数値
社長貸付金・社長借入金等会社と社長
個人の取引チェック
・キャッシュフロー計算書
現預金の増減の原因チェック

クレームの予感

先月、A社様の決算報告会に同席することになり、いつものように、5つの会計データを眺めていた時、ある異常な数値が目に飛び込んできました。私はビックリして担当スタツフを呼びつけ、「このデータ間違ってるんじやないの」、と問いただしました。

結果としては、正しい数値であることを再確認したのですが、私がビックリするぐらいなので、お客様であるA社様はさぞかし驚かれるに違いない、もしかすると、クレームになるかもしれない、と思いました。

この異常値の正体は貸借対照表の負債項目の一つである『未払消費税』というもので、つまりは、A社様が決算時に納付すべき消費税額を表しております。私が、過去3年間の未払消費税の金額を比較チェツクすると、次のように推移していたのです。

・平成25年度4月決算期 250万円
・平成26年度4月決算期 220万円
・平成27年度4月決算期 500万円

平成27年度が何と、前年対比で約2・8倍に跳ね上がっていたのです。ちなみに、年間売上高はほぼ同額なのに、この数値はありえない、と。

想像を超えた税負担

実は、昨年4月1日に5%から8%になった消費増税の影響を、もろに受けていたのです。8%への消費税率アップは頭では分かっていたものの、ここまで負担増になるとは、想像をはるかに超えたものでした。単純に考えれば、5%から8%ということは、1.6倍のはずです。では、なぜA社様の今期の消費税納付額が、1.6倍ではなく2.8倍になったのでしょうか?

そのからくりを、ご説明したいと思います。A社様の場合、前期の消費税納付額が年間500万円を超えていたため、今期の決算を迎えるまでに、 9月、12月、3月と計3回の前払い納付を行っておりました。(これを、消費税の中間申告といいます)。1回あたりの前払い金額は、前期に納付した消費税額の4分の1、と税法で決められております。消費増税がなければ、決算で残りの4分の1相当額を納めて完了のはずなのですが、前期の
消費税額は増税前の税率である5%で計算されているために、8%が適用される今期については相対的に少ない前払い納付となってしまい、4回目の納付となる決算時にしわよせが来たということになります。

*企業様は、前年度の消費税額に基づき、中間申告(前払い)を実施することになります。
60万円以下・・・前払い無し
60万円超500万円以下・・・前年度の消費税額の2分の1を年1回前払い
500万円超6000万円以下・・・前年度の消費税額の4分の1を年3回前払い
6000万円超・・・前年度の消費税額の12分の1を毎月前払い

会計人の原点

案の定、決算報告の席上、「売上が変わらないのに何でこんなに消費税が多くなるんだ、納税資金をこれから急いで準備しないといけないじやないか、もっと早く教えてくれよ」、とお叱りを受けました。

ともすれば、私ども会計人は、帳簿データチェツクや決算書・申告書の作成という作業に重点を置き、お客様にとって最もストレスを感じる納税という行為を軽視しがちなのかもしれません。今回のクレームを猛省するとともに、社内の全体会議において、再発防止を徹底するため、全員で共通認識を持ちました。

私どもの仕事は、決算書・申告書にサインを頂いて終わりではなく、正当な税額を、法定期限内にきちんと納税して頂くことで終わるのだ、ということを。

野本会長のある言葉が、脳裏に浮かびました。「会計人の原点とは何か、と言えぱ、私は税務とか会計とかの数字や法律を扱うことによって、人々に租税正義をきちんと認識させ、正しい方向に導くことではないかと思うのです」

代表税理士 佐藤 修一

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