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税理士コラム

税よもやま話 第1回 利子補給金の話2012年11月01日

業務命令により、恥ずかしながら前号から執筆を開始いたしました税理士の松井です。よろしくお願いします。

私の好きな小説に夏目漱石の草枕があります。冒頭に、

「智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」
という一文がございますが、さすが明治の文豪はよい言葉を残すものだと、幼少のころから七五調の調子のよさが気に入っていました。

国税の世界にいたころも仕事に詰まるとこの名言が頭に浮かんだものでした。税のよもやま話とありふれた表題を付けましたが、いままでにたずさわった国税事案の中で、皆様の参考になるようなこと、興味をもたれそうなことを、よもやまに書き散らしていこうと思っております。

銀行業について

銀行業はご商売をする皆様には特に縁の深い業種です。

意外にシンプルな商売で、資金の調達と資金の運用の二つをなりわいとして成り立っています。すなわち資金に余裕のある方からお金を預かり、預かったお金を資金に余裕のない方に貸し付ける。これだけです。

「そんなことはないだろう。他にもいろいろやってるじゃないか」と言われれば、確かにそのとおりです。ただ、基本となるのは資金の調達と資金の運用であり、他の業務はこの二つから派生した業務に過ぎません(国税の出身者はシンプルな表現を好むのです)。

利子補給金の話

ある大手信用金庫を調査したときの話です。

資金運用収益を検討していたときに、その中のその他の受入利息が入金時において収益に計上されていることに気がつきました(原則として利子の額は、その利子の計算期間の経過に応じ、益金の額に算入されます)。

その他の受入利息の内容は制度融資に伴う利子補給金でした。

制度融資とは、都道府県や各市町村などの地方自治体が中小企業や会社創設を目指す人に対して低金利で融資を行う制度ですが、実際の融資業務に関しては銀行が行うこととなっています。決済の方法としては、金利の一部を自治体が負担し、直接貸付先に支払う方法と、直接金融機関に支払う方法とがあります。後者の場合、金融機関は当初の約定金利から自治体負担分を差し引いた残額を貸付先に請求することとなります。

この信用金庫は後者の方法で融資を行っていました。担当理事に収益計上時期における疑問点を指摘したところ、「利子補給金は自治体から金融機関に支払われるものであり、当方では正しい支払金額の把握は困難であるため、入金時の収益計上が妥当である」との抗弁を繰り返しました。

本店では埒が明かず、支店に出向いて、原始記録を確認することとしました。支店において、制度融資に係る個別稟議ファイル、金銭消費貸借契約書を検討したところ、信用金庫と借主との間で交わされた約定金利は利子補給金控除前の金利であり、おまけに、自治体からは決算期末までに信用金庫に支払われるべき利子補給金の額が通知されていることが判明しました。

結果、決算期末までに計上すべき利子補給金2億数千万円がもれており、この信用金庫には「その他受入金利息計上もれ2億数千万円 也」の更正通知書が送付されることとなりました。

税理士 松井 孝榮

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