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税理士コラム

税よもやま話 第17回 アンタッチャブル2014年09月11日

昔、アンタッチャブルというテレビ番組が放映されたことがあります。

1930年代、禁酒法時代のアメリカ・シカゴを舞台に、アメリカ合衆国財務省の捜査官・エリオット・ネスが街を牛耳るギャングのボス・アル・カポネを摘発しようと奔走する姿を描いたもので、ギャング対ギャング、あるいはギャング対特別捜査班でトミーガンをぶっ放す過激な銃撃シーンが話題を呼びました。のちに映画化され、ケヴィン・コスナーがエリオット・ネスを演じたのをご記憶の方も多いのではないでしょうか。

派手な銃撃戦の場面が多く、長い間、FBIの話かと思っていましたが、私が国税局に採用されてからアメリカ合衆国財務省の酒類取締局の話だと知り、アメリカの同業者はさすがにすごいなと変に感心したものです。

さて、アメリカの同業者は実際どんな税務調査をしているのか気になりませんか。

アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)

IRSはアメリカ合衆国の連邦政府機関の一つで、連邦税に関する執行、徴収を行っています。連邦政府の機構上は財務省の外局であり、日本の省庁になぞらえれば財務省の外局である国税庁に相当し、本部はワシントンDCに置かれています。

米国の税務調査の実態

米国は、世界の中で最も申告納税制度の発展した国だといわれています。米国の税金を集めるシステムは、自己計算申告が基本となっており、税務調査は自己申告というシステムがきちんと作動しているか否かをチェックすることを目的としています。

現在、米国は3億人超の人口から2億3500万件の申告書が提出され、2兆6915億ドルの租税収入が調達されています。対するIRSの定員は約10万人。IRSの法執行活動のうち、任意調査の平均調査割合は0.9%であり、443億ドルの追徴税額を徴収しています。

IRSの徴税コストは、税収1ドルにつき0.4セントで、世界一効率的な税務行政を実現しています(ちなみに日本の国税の100円当たりの徴税コストは1.45円です)。

米国税務行政の大転換

かつて、財政赤字を減らすため、ホワイトハウス・財務省では粗暴な税務調査や徴収が行われ、米国議会・米国民からIRSは猛烈に非難されたことがあります。

1998年IRS長官は、上院公聴会で「米国税務行政近代化計画」を掲げ、(1)納税者をよく理解し、必要なサービスを提供すること。(2)組織を効率化し、説明責任を明確化すること。(3)近代企業なみの業務運営方法に転換すること。(4)新しいIT技術を導入することを明らかにしました。

翌年、納税者のための税務行政を目指して、「IRS再編成改革法」が成立し、IRSの解体的改革が行われました。伝統的な本庁・国税局・税務署の三層の管理機構は廃止され、IRSの組織替えにより、監査組織に関しては以下の4つの部局に分かれることとなりました。

1.大中規模事業者部局(LMSB)
資産が500万ドル以上の大企業、中企業の法人関係を担当。

2.小規模事業者・自営業部局(SB/SE)
小企業、個人経営企業を担当する。

3.給与・投資部局(W&I)
個人での配当、利息収入(資産所得)のある人達のみを監査。

4.免税・政府団体部局(TE/GE)
米国には法制上、公益法人としての固有の法人類型が存在しないため、民間非営利団体はTE/GEに免税資格の認定申請を行い、認定取得後は税法上の規定に基づき、同局による規制監督を受けることとなりました。

酒類取締局について

さて、アンタッチャブルゆかりの酒類取締局は、1919年の禁酒法を施行するために設立されました。当初、これは歳入庁の一部門でしたが、1927年財務省下の独立組織となり、1930年酒類取締局は財務省から司法省へ移管され、一時酒類取締局は短期間ながら連邦捜査局(FBI)へ吸収されています。

1933年に禁酒法が廃止されると再び財務省へ戻されましたが、最終的にアルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF)へと改組されています。

(次回に続きます)

税理士 松井 孝榮

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