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税理士コラム

留学生に対するアルバイト代の取扱い2015年04月21日

桜が街並みを彩る4月は大学などの新入学の時期です。
海外から日本の大学などへの留学生は、年々増加し、平成26年度外国人留学生在籍状況調査結果(独立行政法人日本学生支援機構調べ)によれぱ18万4155人となっています。
その内、アジア地域からの留学生は17万720人で全留学生の92・7%と大部分を占め、また、中国からの留学生は9万4399人、韓国からの留学生は1万5777人と中国と韓国からの留学生だけで、全留学生に占める割合は、59・8%となっています。
海外からの留学生も、日本の学生と同様に生活費等に充てるためアルバイトにより収入を得ることが多々あります。
このアルバイト収入について、国内法においては、留学生であることによる免税の規定はありませんので、仮に、留学生が日本の4年生大学に入学し、国内において勤務することによりアルバイト賃金を受ける場合には、所得税法上、その留学生は居住者として日本人のアルバイト賃金と同様に源泉徴収により課税されます。
そこで、留学生が日本で支払いを受けるアルバイト賃金の課税について、諸外国との租税条約における留学生の取扱い規定及び所得税等の免税措置を受ける際の手続について説明します。
我が国が締結する租税条約の大部分は、学生に関する規定を置き、学生が受け取る報酬等について、OECDモデル条約に準拠した欧米諸国等(アメリ力、イギリス、ロシアなど)との条約では、「生計、教育、勉学、研究又は訓練のために受け取る給付で、国外から支払われるものについて課税を免除する」としています。
したがって、欧米諸国等からの留学生が受け取るアルバイト賃金は日本国内で支払われるもので、国外から支払われるものではないことから免税となりません。
しかし、中国からの留学生は、日中租税協定第21条において、「国外からの送金に限る」とする規定はありませんので日本国内で支払われるものを含め全て免税となります。
また、韓国からの留学生は、日韓租税条約第20条第1項で「国外からの送金について滞在地国(日本)において免税である」と規定し、第2項でこれに追加して、「勤務による報酬が年間2万合衆国ドルを超えなければ役務提供地国(日本)において5年間は免税にする」と規定しています。
なお、租税条約における学生とは、学校教育法第1条に規定する学校の学生、生徒又は児童をいいますので、専門学校や日本語学校などの学生は、租税条約における学生条項の適用はありません。
次に、中国及び韓国からの留学生がアルバイト賃金について、租税条約の免税適用を受ける場合には、「租税条約に関する届出書(様式8)」にその留学生が在学する大学の在学証明書を添付し、入国日以後最初にその支払いを受ける日の前日までに、その支払者を経由してその支払者の所轄税務署長に提出することになります。
なお、留学生本人は、アルバイト賃金が租税条約により免税となることを知らないことが多く、「租税条約に関する届出書(様式8)」の提出を失念する場合があります。
その場合、納付があった日から5年以内に「租税条約に関する届出書(様式8)」と「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」をアルバイト賃金の支払者を経由してその支払者の所轄税務署長に提出することにより、源泉徴収された所得税等の還付を受けることができます。
参考として、中国及び韓国と同様に留学生に対して日本で支払われる報酬等を免税(金額基準・期間制限がある条約を含む。)とする主な条約締結国の一部は次のとおりです。

1 タイ
滞在期問5年以内免税
2 フィリピン
継続5年以内、年間1500合衆国ドルまで免税
3 パキスタン
最初に教育を受け始めた日から3年以内、年間150万円まで免税
4 インドネシア・ハンガリー・ポーランド
到着の日から5課税年度以内、年問60万円まで免税

税理士 大柳 和二

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