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税理士コラム

税よもやま話 第14回 無予告現況調査2014年05月16日

「ごめんください。○○税務署のものですが。社長さんはいらっしゃいますか。突然ですが税務調査にお伺いいたしました。ご協力をお願いいたします」

税務署のいわゆる無予告現況調査を経験した方は、思い出すとゾッとする瞬間かもしれません。
無予告現況調査は主に飲食店、パチンコ店等、現金取引の多い納税者に対し実施される調査手法です。調査着手前には店の外観調査、内観調査、代表者の住所地の確認等、慎重な事前準備が行われます。

まだ私が駆け出しのころですが、銀座のスナックの内観調査に同行させられたことがあります。そのおり、担当した年配の上席調査官が注文したのがビールとピーナッツのみ。先輩は店の中をたえず見回し、帰りがけにはレジの中をのぞきこむ。目立つことこの上ない。バレバレで、その後の現況調査は失敗に終わったと聞き及んでおります。
また、最近は法人の現況調査撃退法もかなり進化してきています。あるパチンコ店では、店内の奥まったところに設けられた事務室の中にテレビモニターがずらっと並んでいました。店内の不審者を監視すると同時に、店周辺に設置されたテレビカメラから店外の不審者も一望することが可能となっています。税務署員らしきものが周辺をうろうろしているとすぐに分かるとのことです。

税務署も負けてはいません。早朝、ある会社に無予告調査に入り、調査官が代表者から会社の概況等を聴取しているうちに、予定とは違う法人であることに気が付きます。間違えて隣の会社に入ってしまったわけです。いまさら後には引けず、調査を続行した結果、幸いにも不正所得を把握し事なきを得たという話を聞いたことがあります。

税務調査手続きに関する改正

さて平成23年、50年ぶりの国税通則法の大改正が行われ、税務調査に関する手続きが大きく変わりました。

改正された国税通則法では、税務調査に関する手続きが法律に定められました。

(1)事前通知・納税者と税務代理人の双方に事前通知されます。
・通知される内容は、開始日時、開始場所、調査対象税目、調査対象期間などです。
・電話等により、納税者や納税代理人と日程調整したうえで通知が行われます。
・納税者の申立てにより、事前通知事項の詳細について納税代理人が受けることができます。
・通知後、納税者等から合理的な理由(業務上やむを得ない事情)による調査開始日時等の変更の求めがあった場合には再調整が可能です。
(2)調査時の手続き・従来の「質問」「検査」に加え、納税者に対し帳簿書類の「提示」「提出」を求めることができることが法制化されました。
・帳簿書類の留置き・返還の際に、「預り証」が交付されます。
(3)調査終了の手続き・実地の調査を行った結果、更正決定等がない場合には、納税者に対してその旨が書面により通知されます。
・通知後、「新たに得られた情報に照らし非違があると認めるとき」は再調査の可能性があります。

事前通知を要しない場合

(改正の内容)
無予告現況調査ができる要件が法律に明記されました。すなわち、「税務署長が調査の相手方である納税義務者の申告や過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法または不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合」には、事前通知を要しないとされました。
この改正は平成25年1月1日以降適用されています。

無予告現況調査を受けた際は、慌てずに、「本当に自分の会社が調査対象なんでしょうね」と調査官に念を押す必要があるかもしれません。

税理士 松井 孝榮

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