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税理士コラム

「非居住者との不動産売買における留意点」2015年05月21日

円安の影響

円対ドル為替は、平成25年1月では1ドル89円であったものが、平成24年1月では103円、そして、今年1月には118円と円安が進んでいます。
その円安影響でドルに換算した日本の不動産価格が低下したため外国人投資家などの非居住者による平成26年度の日本における不動産取得額が1兆円に迫り、過去最大となりました。
特に、中国などアジア系の投資家に至っては、森林などの土地だけではなく、マンションや商業ビル、一戸建てなどを購入する人が増加しています。
さらには、 2020年東京オリンピック開催により地価と事務室の賃貸料が上がるという見方のため、今後も非居住者による不動産投資への動きが活発になると予測されます。

税法と租税条約

今回は非居住者と不動産売買取引を行った場合の税法上の取扱いについて説明します。
非居住者が日本国内の不動産を売却した場合は、買受人が日本人若しくは他の非居住者であっても、譲渡益に対する所得税等を納付することに何ら変わるところはありません。
しかし、非居住者から日本国内にある士地及び建物等の不動産を購入し、その譲渡対価を支払う者は、原則、その支払いの際に譲渡対価に対し、10・21%の税率により所得税及び復興特別所得税を源泉徴収する必要があります。
そして、譲渡対価を得た非居住者は、確定申告で所得税の精算を行うことになります。
特例として、士地等の譲渡対価の額が1億円以下で、その士地等を個人が自己又はその親族の居住の用に供するために譲り受けたものである場合には、その個人が支払う譲渡対価については、源泉徴収する必要はありません。
ただし、この特例により、源泉徴収不要とされても、所得税等が非課税となったわけではないので、確定申告は必要となります。
このような譲渡収益についての租税条約の取扱いがどうなるかというと、例えば、日米租税条約の場合、同条約第13条1において「一方の締約国(米国)の居住者が他方の締約国(日本)内に存在する不動産の譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国(日本)において租税を課することができる。」と規定し、不動産所在地国で課税する取扱いとなっています。
このように租税条約において租税を軽減又は免除する規定がありませんので、「租税条約に関する届出書」の提出も必要がないことになります。各国と締結しているほとんどの租税条約が同様の規定になります。
また、非居住者と不動産譲渡契約書を作成した場合には、課税文書として印紙税を納める義務があります。日本国内で課税文書を作成される場合には、その作成者が非居住者や外国法人であっても印紙税の納税義務者となります。
ただし、印紙税法は日本の国内法ですのでその適用地域は日本国内に限られることになります。
したがって、課税文書の作成が国外で行われる場合には、たとえ、その文書に基つく権利の行使が国内で行われるとしても、また、その文書の保存が国内で行われるとしても、印紙税は課税されません。
不動産譲渡契約書の場合、当事者双方が署名、押印した時が作成の時になりますので、一方の当事者が日本で署名、押印し、その文書を国外に送付し、もう一方の当時者が外国で署名する場合には国外で作成されたことになり課税文書にはなりません。
その場合、返送された1通の契約書は自分のところに保存されることになりますから、いつ、どこで作成されたのかを明らかにしておかなければ、印紙税が納付されていない契約書について後日トラブルが発生することが予想されます。
後日のトラブルを避けるために保存する契約書上に作成場所を記載するとか、契約書上作成場所が記載されていなければその事実を付記しておく等の措置をしておくことが必要になります。

税理士 大柳 和二

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