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税理士コラム

ガン治療と会社経営2018年05月22日

 私は8年前に肺ガンと診断され、手術を受けました。しかし2年前に再発、転移も見つかりました。私は現在もガン患者として治療中です。
 2年前にわかった再発・転移については昨年12月まで、家族にしか知らせておりませんでした。周囲に必要以上の心配を掛けたくなかったし、何より自分自身の気持ちの整理がついていなかったからです。
 そんななか昨年12月、私はあるきっかけから気づきを得、「自分自身のガン療養」をはっきりと見いだすことができました。私の中にあったガン治療への迷いは消え、自分自身のやり方で生き抜いていくことに強い確信を得たのです。
 それからはもう周囲に自分の病状を隠す必要はなくなり、本稿の連載でも、その経緯を詳述しました。
 私は昨年12月を境に変わりました。ガンになる運命にあった過去の自分から脱却することで、本来の生命力を取り戻しはじめたのです。
 ところで、そうなってみて気づいたことが、一つありました。
 私がそれまでの自分自身を省みて行動を変え、本来の生命力を取り戻したこと。それは、私自身がかつて会社経営の建て直しの際に経験したことと、まったく同じではないか、ということでした。
 ガン治療と会社経営の不思議な共通点について、今回はお話ししてみたいと思います。

ガンを宣告された者の心理とは

 ガンを宣告されると、誰でもその治療方法に敏感になります。医学的なガンの3大療法(手術、抗ガン剤、放射線)のほかにも、民間療法などの情報がとても気になるのです。
 雑誌やインターネットにはガンに効く健康食品や特殊な健康法、あるいは温泉地など、さまざまな情報がこれでもかというくらいに溢れています。そういった情報を必死で追い求め、あれこれと試してみたくなるのです。私もそうでした。その不安な気持ちは、ガンを宣告された人でなければわからないでしょう。
 しかし、すべての人のすべてのガンに効く最強の方法というものは、残念ながら存在しないようです。右往左往して追い求めても、奇跡というものはそう簡単に見つかるものではありません。
 昨年暮れ、懇意にしていただいていた同業の先生が咽頭ガンで亡くなりました。まだ60代でした。やはり「これはいい」という情報を聞けば、日本全国どこにでも出掛けて試しておられたそうです。しかしその甲斐なく、去年亡くなられました。
 今年1月には、39年勤めた当社の女子社員が亡くなりました。私と同じ肺がんでした。この方は民間療法に救いを求めることはしませんでしたが、とにかく医師から言われたことを信じて勧められた治療を行ってきました。やがて転移が見つかり、抗ガン剤治療が始まりました。
 それまでの彼女は、ガンを抱えながらも元気に出社して、お客様のところまで出掛けて帳簿の整理などもしっかりこなしていたのです。ところが抗ガン剤治療が始まったとたん一気に生命力が衰え、1か月後に亡くなったのです。
 私も抗ガン剤治療を受けたことがあります。ガン細胞とともに元気な細胞も痛めつけられるので、副作用の苦しさは並大抵ではありません。
 「抗ガン剤治療なんか受けなかったら、〇〇さんはいまもそれなりに元気でいられたたんじゃないか…」
 率直にそう思ってしまうのです。

自分はなぜガンになったのだろう

 私が気づいたことは、ガンは自分で治さなければ治らない、ということでした。もちろん医師の言葉を聞くことは大事ですし、必要な治療は受けるべきでしょう。
 しかし、頼りきってはいけないのです。あるいは、医学では治せないと民間療法に救いを求めても、そこに解決法はない、ということです。
 もっと肝心なことを思い出さなければいけないと、私は思うのです。
 ガンとは、いったいどんな病気なのでしょうか。それは肥満症や高血圧症、糖尿病などと同じような生活習慣病なのです。体内で悪さをしているガン細胞は、自分自身の細胞です。生まれつきの体質だけでなく、長年の不自然な生活習慣によってガンができてしまったのです。その原因は、自分の中にしかありません。
 インフルエンザのような感染症は、体外からウイルスなどの病原菌が侵入して起こる病気です。したがって抗生物質などで増殖した病原菌を退治すれば治ります。ところが生活習慣病は、薬で治すことはできません。
 血圧や血糖値の数値は薬を飲めば下がりますが、それは治ったのではありません。数値が高いままでは危ないので、とりあえず薬の力で下げているだけです。高血圧も糖尿病も、その人の長年の生活習慣によって自分でつくった疾患だから、薬では治らないのです。ガンも同じです。
 原因はもともと自分の中にある。それが、私の言う「肝心なこと」なのです。

自分を変えることが何よりも大事

 ガンは長年の生活習慣、つまり悪い食生活、不規則な生活、ストレス、運動不足などの積み重ねで発生してきます。そうであれば、もしガンを治したいなら「治してもらう」ことを求める前に、まずは自分自身が積み重ねてきた悪い生活習慣を見直し、改善していくことが先であるはずです。私はそこに気づきました。
 私の場合、たとえば寝るのはいつも午前1時過ぎでした。テレビのニュース番組などを見ていて、床に入るのはいつもそんな時間でした。
 翌朝は、9時前に起きたことはありませんでした。
 人間のからだは地球の自転で起こる規則正しい1日のリズムに合わせて進化して出来上がっているのに、人間はどうしても無意味な夜更かしをしてしまいます。それを何十年も続ければ、老化とともにガンなどの問題も発生しやすくなるわけです。
 また、私は運動など何もしていませんでした。電車通勤ですが、自宅から最寄りの駅まで5分、着いてから会社まで5分、まとめて歩くのはそれだけです。土日も家でゴロゴロでした。動くのが動物ですから、そんな生活を続けていればからだはおかしくなります。
 食事内容も同様です。からだが喜ぶような自然の食べものを、私は自分でないがしろにしていました。
 私は、これまでやってきた悪い習慣を改め、逆にこれまでやってこなかった良い習慣を新しく取り入れました。早朝に起きて散歩とヨガを行い、毎日2リットルもの無農薬野菜ジュースを飲んでいます。自分を変えたのです。
 顔色は良くなり、声に張りが出、表情が生き生きとしてきたと、たくさんの人から言われるようになりました。
 私は新しい習慣を継続していくこと大きな価値を見いだし、いままでよりさらに楽しく快適な毎日を過ごせるようになりました。
 これが私が確信するガン療法です。

会社経営もガン治療と同じ

 よく考えてみれば、これは会社経営も同じなのです。
 中小企業は7割以上が赤字経営と言われます。経営者は資金繰りに苦しみ、銀行からお金を借ります。
 しかし、それはその場しのぎの対症療法でしかなく、それで赤字経営を完治させることはできません。その対症療法を10年、20年と続けていけば根本の問題は慢性化し、悪いということさえ自覚できなくなります。生活習慣病と同じです。
 そして、いよいよ会社経営が苦しくなると、ガンになった人が右往左往するように、経営者はうまそうな話を探し飛びつきます。ほかで儲かっている商売に手を出そうとします。「今回だけ」と高利貸しから資金を調達します。
 自社に巣食っている長年の問題を放置したまま社外に解決策を求めようとするのです。
 それは、倒産への道にほかなりません。
 当社が、正にそうでした。年に数億円もかかっていたシステム開発の費用を銀行から借りつづけ、気づいたら20億の借金を抱えていました。銀行から貸し渋りや貸し剥がしにあっていよいよ苦しくなり、初めて気がつき考えました。何が悪かったのか、なぜこうなったのか。
 原因は、自分自身の経営にあったのです。中小企業経営イコール社長の考え方です。社長の行動が経営のすべてです。経営不振、膨大な借金の原因は、経営者以外にあるわけがないのです。
 経営を建て直したいなら、いくら銀行に支援を求めても無駄です。自分(=会社)をすべて見直し、悪いところを洗い出し、行動で変えていくしかありません。自分の中にある経営不振の根本原因を自分で見つけ、自分で変えていくのです。
 しかし、気づいて修正したからといって翌日すぐに治るわけではありません。生活習慣病と同じです。長年にわたって悪い習慣を続けてきてそうなっているわけですから、同じように時間をかけて治していかなければいけません。
 経営者がその気になって自分をコツコツと変革していけば、たとえ成果は簡単には出なくても会社は必ず再生していくのです。
 それはどういうことか。たとえば毎日帳簿をつけ、売上の推移を見ていく。自社のキーとなる数字を見きわめ、それを毎日追いかけていく。そして、そこに現れるほんの少しの変化をいつも眺め、それを自信にしていくのです。
 あるいは、大事な従業員の扱い方はどうだったかと自問する。反省点を見いだしたら、毎日社員に声を掛けることを習慣づける。「今日は声を掛けたか」を毎日チェックして記録する。
 そんな毎日をくり返していけば、気づけば生き生きとした従業員ばかりになっているでしょう。
 小さな変革を地道に継続すれば、知らずに会社も変わるのです。

継続のコツは「楽しんでやること」

 自分の悪い習慣を変えようと思いつく人はいても、たいてい継続できず挫折してしまいます。「習慣は恐ろしい」と言われるように、自分を変えていくのは簡単ではありません。
 継続のために大切なのは、楽しく続けられる仕掛けを自分で意識してつくることです。
 前述の「記録して見返して自信をつける」ということは、シンプルですが効果的です。辛いことは続けたくないのが当然ですから、自分が喜べるように、楽しめるように、環境を整えるわけです。
 たとえば私は、いまとてもワクワクしていることがあります。
 この原稿を書いているのは土曜日で、来週月曜日はホワイトデーです。この日、私はあるサプライズを会社に用意しているのです。
 毎年バレンタインデーには、女子社員からプレゼントをいただきます。今年は、素晴らしいマフラーを贈っていただきました。決して高くない給料なのに申し訳ない、何かお返しをしたいと考え、私は女子社員全員に化粧品セットを用意しました。感謝の言葉を印刷したカードに手書きでサインをして同封し、リボンもかけました。いま、会社に隠してあります。月曜日の社内にはサプライズの歓声が上がることでしょう。
 でも、ふと考えました。男性社員は蚊帳の外になってしまいます。ホワイトデーですから仕方ないのですが、私はちょっと知恵を出しました。男性社員のほとんどは妻帯者ですから、その奥様に「いつも影で支えていただいて感謝しています」とプレゼントをしたらどうだろう。素晴らしい考えだと思って、私は男性社員用にアロマのバスオイルも用意しました。女子社員へのプレゼントを拍手で見ていた男性社員には、さらに大きなサプライズです。
 月曜日に社員みんなが喜ぶ光景を想像して、私はいま一人でニヤニヤしています。早く月曜日が来ないかなと、ワクワクしているのです。
 そんな経営者の気持ちは従業員の仕事へのモチベーションにもつながるでしょう。それを狙ってやるわけではありませんが、楽しく嬉しいことはいつも大切なことなのです。
 自分を変えること、会社を変えることは、楽しいことだと思います。そうやって前向きに楽しみながら問題解決に向かっていけば、ガンも経営不振も怖いことはないのです。

【追記】脳に転移したガンの影が3月の検査で消えました。

創立者 野本 明伯

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