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税理士コラム

税よもやま話 第19回 短期前払費用2014年11月11日

節税策としてお馴染みの短期前払費用の法人税基本通達は、今から30年ほど前(昭和55年)に発遣されました。

本通達は、1年以内の短期前払費用について、収益との厳密な期間対応による繰延経理をすることなく、その支払時点で損金算入を認めるというものであり、企業会計上の重要性の原則に基づく経理処理を税務上も認めるというものでした。

ただし、借入金を預金や有価証券などに運用する場合のその借入金の支払利息のように、収益と対応させる必要があるものについては、たとえ1年以内の短期前払費用であっても、支払時点で損金の額に算入することは認められません(法基通二-二-十四)。

ご存知のように、前払費用とは、法人が一定の契約により継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時において、まだ提供を受けていない役務に対応するものをいいます。前払費用は、原則として支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきものです。

本通達ができる以前は、税務調査の際に指摘された前払費用の否認額を巡り、納税者との間によくトラブルが発生しました。調査を受ける法人に対し、些細な前払費用でも収益との厳密な期間対応が要求されたからです。

短期前払費用の適用要件

一見、便利な節税策と見える短期前払費用の特例も、いざ適用を受けようとするとさまざまな要件が必要となってきます。

まずは、「前払費用」としての次の5つの要件を満たしていることが必要となります。
(1)一定の契約に従って継続的にサービスの提供を受けるものであること(等質・等量のサービスであることが必要です)
(2)役務(サービス)の提供の対価であること
(3)翌期以降において、時の経過に応じて費用化されるものであること
(4)当期中に支払いが済んでいること
(5)毎期継続して同様の経理処理をおこなうこと

適用する際の注意点

1.2年分など、1年を超える支払をした場合は全額資産計上となります。
2.もともと月払いで契約を交わしていた家賃について、貸主の了承を得ないで向こう1年分を前払いしたとしても、短期前払費用の特例を受けることはできません(事前に月払い契約を年払い契約に変更しておく必要があります)。
3.決算までに支払うこと(未払いはダメです)。
4.売上原価となる経費など収益と対応させる必要があるものは、1年以内の短期前払費用であっても、支払時点で損金の額に算入することは認められません。
5.顧問税理士への報酬を期末直前に1年分前払いしたとしても、短期前払費用の特例を受けることはできません。税理士のサービスは、等質・等量のサービスとは言えないからです。

4月から翌年3月分までの駐車場代金1年分を3月25日に支払っている場合

短期前払費用の法人税基本通達は、「支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るもの」となっております。

そのため、3月25日(支払った日)に翌年の3月31日(役務提供期間の末日)までの分を支払うと、厳密に言えば、役務提供期間の末日(翌年の3月31日)が、支払日から一年の期間を数日分超えることになります。しかし、数日間のズレは許容範囲だと考えられます。数日間とは、決算締切日の通達を類推解釈し、おおむね10日以内と考えることができます(法基通二-六-一)。

なお消費税は、1年以内の前払費用について法人税法の取り扱いにより支払時に損金経理(経費計上)しているときは、その支出をした日の属する課税期間において仕入税額控除をすることができます。

税務調査に立ち会っていますと、安易に前払費用を経費にしているケースを時々目にします。短期前払費用の特例を適用する場合は、前もって税理士と相談することをお勧めします。

税理士 松井 孝榮

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