年末調整とマイナンバー
2016年12月01日
代表社員 佐藤 修一 先日、飲食店を営む事業主様から、次のような悩み相談を受けました。
「年末調整の書類と一緒に従業員からマイナンバーを預かろうとしたら、パート社員のAさんが辞めたい、と言い出して困ってるんだ。Aさんは勝手知ったる20年来のベテランだし、辞められたら商売を続けられない、いまさら新人を採用して教育するのも面倒だし、もう店をたたむしかないよ……」。理由をうかがうと、マイナンバーを教えると、給与額が把握され公営住宅の家賃が上がってしまうかもしれない、その負担分を考えたら働かないほうがマシ、という話しでした。
今年の年末調整は、はじめての『マイナンバー対応』という、厄介な問題を抱えながらのスタートになりました。
導入目的と利用目的を理解する
年末を迎え、Aさんのように、「家賃負担が増えるのでは、何年間も遡ってその差額を徴収されたらどうしよう」、と漠然とした不安を抱えている方も多いかもしれません。しばらくは、マイナンバーを安全に管理する義務がある事業者や年末調整計算を請負う会計事務所は、この制度の動向を見据えた柔軟な対応が求められるのではないでしょうか。
ここで改めて、マイナンバー制度の導入目的と利用目的を確認しておきましょう。まず導入の狙いは、高齢化で社会保障費が膨らむ中、税金や社会保険料をきちんと集めて、適正に社会保障給付を行うことにありました。そして、その利用目的は、法律で明確に限定列挙されています。
マイナンバー法では、その利用範囲(番号法第9条)や特定個人情報の提供制限(番号法第19条)が厳格に決められているため、「税と社会保障」に関する特定事務に限定をして利用することになります。まさにAさんのケースにおいては、地方公共団体がマイナンバーを利用することになります。
※一般に、マイナンバー法、共通番号法、番号法は同じ法律を指します。正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」といいます。
提出書類と記載時期
当然のこと、この時期に弊社が請負う年末調整関連業務においても、マイナンバーを記載し提出する書類は限定されております。ちなみに、平成29年1月末に提出するものとしては、平成28年1月1日以降の支払いに係る次の法定調書があります。
- 給与所得の源泉徴収票
(給与支払報告書) - 報酬、料金、契約金及び賞金の支払 調書
- 不動産使用料等の支払調書
- 配当、剰余金の分配及び基金利息の 支払調書
また、このように利用目的が限定されているマイナンバーは、大切な個人情報であるために、その取扱いにおいて、お客様企業や弊社は細心の注意を払う必要があります。
ペーパーでの管理は危険
ここでお薦めの、年末調整時期におけるマイナンバーの収集・管理方法をご案内したいと思います。
先ずは、弊社よりご提供させていただきました「個人番号申出書」に従業員ご本人様及び扶養親族様のマイナンバーを記載いただき、昨年末に郵送された「通知カード」と運転免許証等のコピーと一緒に収集してください。それと同時に、お馴染みの「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の用紙を預かりますが、マイナンバー(個人番号)欄には、絶対に記載しないことがポイントになります。
次に、弊社独自の会計・給与ソフトCASH RADARに搭載されたマイナンバーメニューに入力を完了したら、マイナンバーが記載されている「個人番号申出書」及び「通知カード」のコピー等の書類を必ず破棄することを徹底してください。
ペーパーに記載されたものは独り歩きする危険性が高く、漏洩・紛失のリスクがあります。「マイナンバーは、絶対にペーパーでは保管しない」、これがお客様企業にとりまして、最善の安全管理への第一歩と考えます。
※マイナンバー制度につきましては、第72・75・77号もご参照ください。また、収集・管理方法についてご不明な点がございましたら、担当者までお気軽にお問い合わせください。
代表社員・税理士 佐藤 修一