「金融所得課税」一体化について
2016年01月16日
税理士 大柳 和二平成27年分所得税の確定申告がもうすぐ始まります。
ところで、株式等の金融資産から生じる所得については、金融所得課税の一体化を進める改正により平成28年分所得税から課税方式が見直されましたので、その内容等について説明します。
利子・配当・株式譲渡益課税の沿革
一般的に、株式等の金融資産から生じる所得には利子、配当及び譲渡損益等がありますが、それぞれの課税方式等は次のとおりになっています。
(1)利子に対する課税は、昭和63年度に源泉分離課税化(所得税15%、住民税5%)で一本化されてから、その後は一度の改正もなく現在に至っています。
(2)配当に対する課税は、昭和40年度に源泉分離選択課税及び申告不要制度が創設されましたが、平成15年度に源泉分離選択課税が廃止され、上場株式等(大口以外)については、軽減税率(所得税7%、住民税3%)を適用し、総合課税としました。その後、平成21年度には上場株式等の配当等については、総合課税だけではなく申告分離課税の選択をすることができることになりました。
(3)株式譲渡益の課税については、昭和28年度以降、原則非課税であったが、平成元年度に原則課税(申告分離課税か源泉分離選択課税のいずれかの方式を選択)となり、平成15年度の配当所得の源泉分離選択課税の廃止と同時に申告分離課税へ一本化されました。
利子所得の分離課税の改正
平成28年1月1日以後に受け取る特定公社債の利子については、改正前は源泉分離課税(国税15%・地方税5%)でしたが、改正後は申告分離課税(国税15%・地方税5%)となります。
また、同族会社が発行した社債の利子で、その同族会社の役員等が受け取る利子については、改正前は源泉分離課税(国税15%・地方税5%)でしたが、改正後は総合課税となります。その結果、改正前はオーナー会社の社長様が受け取る社債の利子は20%の源泉徴収で課税関係が終了し高額所得者であれば税率差の分有利でありましたが、会社に対する貸付金の利息を受け取った場合(雑所得)と同様に確定申告をすることになります。
資産区分別の利子所得の取扱いは次表のとおりとなります。
(注)1特定公社債等の主なものは、国債、地方債、公募公社債、上場公社債である。
2申告分離、源泉分離の税額は国税15%・地方税5%である。
株式等に係る譲渡所得等の課税の特例の改正
これまで公社債の譲渡益は非課税とされ、譲渡損失はなかったものとみなすこととされていましたが、公社債、公社債投資信託等に対する課税方式の見直しが行われ、平成28年1月1日以後の譲渡所得等に対する課税は次表のとおり申告分離課税方式となりました。
また、特定公社債等に係る利子所得、譲渡所得に対する課税については上場株式等の配当所得、譲渡所得との損益通算を可能とするとともに、この損益通算の結果、控除しきれない損失がある場合には確定申告をすることで翌年以後3年間にわたり繰越控除が可能となり、翌年以降の利益を損益通算により減少させることができます。
ただし、改正前は非上場株式の譲渡による損失は上場株式の譲渡による利益と、上場株式の譲渡による損失は非上場株式の譲渡による利益と損益通算できましたが、改正後は上記表中の上場株式及び特定公社債等に係る譲渡所得と非上場株式及び一般公社債等に係る譲渡所得の間の損益通算はできませんので注意してください。
元国税調査官・税理士 大柳 和二