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設立・解散・清算時の手続き 第2回

2015年08月21日

前回は法人(株式会社)を設立して事業を行う際の手続き等について説明しました。経営者としては、設立した株式会社が事業拡大し、発展していけば事業拡大戦略に力を注いでいけばいいのですが、業績が悪化し、今後も悪化が続くと見込まれる場合又は会社存続のメリットがなくなった場合などは法人の解散を考える必要が出てきます。そこで、今回と次回に分けて解散から清算結了に関する事項について説明します。会社の主な解散事由としては、次の7項目が考えられます。(会社法第471条・472条)
①株主総会の特別決議によるもの
②破産手続開始の決定
③合併(当該株式会社が消滅する場合に限る)
④裁判所による解散命令
⑤休眠会社のみなし解散
⑥定款で定めた存続期間の満了
⑦定款で定めた解散事由の発生
税務署への解散に係る問い合わせは、上記①の株主総会の特別決議によるものがほとんどです。株式会社が解散すると、会社はその事業目的である営業活動ができなくなり、合併の場合を除き、その財産の整理を行う範囲内で法人格を有することになります。つまり、営業目的ではなく、ただの清算事務を終わらせるために存在することになるので、営業活動を前提とするような行為や清算の目的に反する行為も行うことができなくなります。そして、営業活動のために必要な会社の役員である代表取締役、取締役は存在意義を失い、清算事務を行う責任者である清算人が選ばれて、清算の実務(財産の処分、債務の整理、法人税等の申告など)を行うことになります。清算人には通常代表取締役が就任します。

解散決議後の手続き

1 税務署への手続き
税法上の法的根拠はありませんが、実務上は解散後速やかに「解散届(異動届出書)」に解散事業年度、清算人、解散の日及び登記年月日を記載して提出します。この場合の「解散の日」とは○年○月○日に解散する旨を決議した場合はその日であり、解散日を明示しない場合は解散決議の決議日が解散日となります。(法基通1-2-4)
そして、事業年度開始の日から解散の日までの事業年度に係る「解散確定申告書」を解散の日の翌日から2か月以内に提出することになります。この場合、解散の日が新しい事業年度末となるため、解散の日を従来の決算日に合わせると決算事務が軽減されます。
2 その他の手続き
その他の手続きとしては、解散日後すぐに債権者に対する公告を行います。(会社法第499条)
その内容は、会社債権者に対して2か月以上の期間を定め、「会社を解散しましたので、債権がある方は定められた期間内に申し出てください。申し出がない場合は、清算から外します。」といった内容の文章を官報に公告することになります。次に、解散日から2週間以内に解散登記と清算人の登記を行う必要があります。清算人の登記も会社の解散の登記も申請は清算人が行います。この二つの登記は別々に申請することもできますが、手続きの都合上、同時に申請するのが普通です。この時に登録免許税3万9千円の法定費用が発生します。また、清算人は解散日現在の財産目録と貸借対照表(財産目録をベース)を作成しなければなりません。財産目録における財産の評価は、原則として処分価格によりますが、すべての財産について処分価格を明らかにできるとは限りませんので、その場合は取得価額のままでも構いません。

解散申告書作成の留意点

申告に使用する別表及び添付書類等は、通常の事業年度と同じです。ただし、会社法上の貸借対照表とは別途に税務申告用の貸借対照表(取得原価ベース)を作成しておく必要があります。また、事業年度が1年未満となる場合には、設立時と同様に次の項目について月数按分が必要となります。
1 減価償却資産の限度額を計算する場合の償却率
2 繰延資産の償却限度額
3 寄附金の損金算入限度額の計算
4 一括償却資産(20万円未満)の損金算入限度額
5 中小法人等の場合の軽減税率(年800万円以下に相当する金額)
6 交際費等の損金算入限度額の計算
7 中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)損金算入限度額(300万円基準)