マンション管理組合の収益事業に課税
2014年12月21日
税理士 大柳 和二税務総合戦略室便りの執筆も今月で3回目となりますが、今回も新聞記事をネタに書きたいと思います。今回は、平成26年9月30日の読売新聞朝刊に掲載された「マンション管理組合の収益事業に課税」についてです。
法人税法は税負担の公平を目的に全ての法人を対象に適用されます。そして、「人格のない社団等」は法人とみなして、同法の規定が適用されます。この「人格のない社団等」については、法人税法に「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるもの」と定義し、マンション管理組合は「人格のない社団等」に該当します。
また、課税所得の範囲についても、株式会社等は全ての所得に課税されますが、この「人格のない社団等」は、収益事業を行う場合に限り、その収益事業から生じた所得についてのみ法人税が課されます。収益事業とは、販売業、製造業その他法人税法施行令第5条第1項に掲げられた34事業に該当する事業で、継続して事業場を設けて行うものをいいます。
私が税務相談室に在籍していた当時は、マンション管理組合が区分所有者以外の者へマンションの駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定に係る統一的な取扱いが明らかにされていませんでしたが、平成24年2月13日に次の3つのケースについて、それぞれの事実関係を前提としたものではありますが、各ケース毎に一般的な取扱いが明らかにされました(*1)。
ケース 1
事実関係・募集は広く行い、使用許可は区分所有者であるかどうかを問わず、申込み順とする。・使用料金、使用期間などの貸し出し条件は、区分所有者と非区分所有者との差異がない。判断・区分所有者に対する優先性がまったく見られず、共済的事業とは認められないことから、非区分所有者の使用のみならず区分所有者の使用を含めた駐車場使用の全てが収益事業(駐車場業)に該当する。
ケース 2
事実関係・区分所有者の使用希望がない場合にのみ非区分所有者への募集を行い、申込みがあれば許可する。・貸し出しを受けた非区分所有者は、区分所有者の使用希望があれば、早期に明け渡す必要がある。判断・区分所有者に対する一定の優先性が見られることから、区分所有者の使用は共済的な事業(非収益事業)であり、余剰スペースを利用した事業のみが収益事業(駐車場業)に該当する。
ケース 3
事実関係・区分所有者の使用希望がない場合であっても、非区分所有者に対する積極的な募集は行わない。・非区分所有者から申出があり、空き駐車場があれば短期的な非区分所有者への貸出しを許可する。判断・積極的に外部使用を行おうとした わけではなく、非区分所有者の申出に応じたものであること、また、区分所有者の利用の妨げにならない範囲内でごく短期的に行うものであることから、外部使用による収益は区分所有者のための共済的な事業を行うに当たっての付随行為(非収益事業)とみることができる。
また、所得金額の計算については、ケース1においては、募集に要した費用や駐車場の維持管理費などは「直接要した費用の額」に該当します。一方、ケース2においては、外部に対する募集に要した費用は「直接要した費用の額」に該当しますが、駐車場の維持管理費などは「共通する費用の額」として、合理的な基準により外部使用に係る費用の額を配賦することになります(*2)。
なお、駐車場施設などの資産は区分所有者の共有物であり、マンション管理組合の所有物ではないことから、減価償却費は計上されません。
*1 名古屋高裁平成17年10月27日判決(確定)
*2 平成17年度 税制改正の解説抜粋(措置法41の4の2関係)
税理士 大柳 和二