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組合課税について

2014年11月21日

平成26年9月23日の朝日新聞朝刊に、『節税 沸く航空機リース』の見出しで、法人オーナーにとっての相続税対策としての「航空機リースによる節税策」という記事が掲載されていました。

その記事を読みながら、私が調査部に勤務していた頃、レバレジッド・リースを利用した航空機リース事業で生じた損失が損益通算の対象になるか否かの訴訟に対する判決(*1)があったことを思い出しました。

レバレジッド・リースの仕組み(スキーム)ですが、まず、リース会社などが投資家(富裕層)から出資を募り、投資組合を設立します。投資組合は出資金と金融機関等からの借入金(ノンリコースローン)で航空機を購入し、航空会社にリースします。リース期間はだいたい10年ぐらいだったと思います。組合はリース取引に係る損益を計算しますが、当初5年間の損益は、航空機の減価償却費がリース収入を上回るため、赤字になります。

このような組合契約による課税については税法上に明確な規定がなく、通達によって構成員課税を規定し、任意組合であればパススルー課税で、匿名組合であればペイスルー課税として取扱ってきたところです。そして、所得税法では、航空機の貸付は不動産所得となりますので、この不動産所得で生じた赤字(損失)を他の所得と損益通算を行うことができ、投資家の所得税が通常より減額となります。

これに対し、国税当局は、レバレジッド・リースにおける投資家の目的は事業参加ではないため、当該取引は経済合理性がなく、租税回避であるとして、損益通算を認めず課税処分を行いましたが、判決は実に明確なもので、「組合は必要要件を満たしており、民法上の任意組合に当たる。そのため、航空機リースによる所得は不動産所得に当たり、減価償却による赤字を他の所得と損益通算することができる」としたのです。

さらに、国税当局が主張した「税負担軽減を目的とする租税回避である」という点についても、「税負担を考慮するのは合理的で、経済活動ではごく自然なことである」と退けてしまいました。

ここでの問題点は、事業から生じる所得を組合員の不動産所得として取り扱うか、雑所得として取り扱うかによって、損益通算ができるか否かが決まることにあります。

そこで、課税当局としては従来の法律でレバレジッドリースを規制することはできないことから、立法によって規制すべく、平成17年度の税制改正において、特定組合員(一定の業務執行組合員以外の組合員)が組合事業から生ずる不動産所得を有する場合に、当該組合事業による不動産所得の損失の金額はこれを生じなかったものとみなす。よって、この組合事業による不動産所得の損失の金額について、給与所得等の他の所得と損益通算できない。また、この組合事業による不動産の所得の損失の金額は各組合契約の組合事業ごとに計算するため、別の組合事業の利益や、組合事業以外の一般の不動産所得との損益通算(不動産所得内の通算)もできないということになりました(措置法41条の4の2)。

この改正において、法人税については匿名組合契約も損失制限の対象とされていますが、所得税において、匿名組合契約が措置法41条の4の2の対象から除かれているのは、個人の組合員が営業者から分配される利益については、基本的には雑所得として取り扱われ、その損失について損益通算が認められていないことから、あえて損失制限の対象とする必要性が乏しいことによるものと考えられます(*2)。

ただし、匿名組合契約による組合員の所得の取扱いについては、基本通達が改正され、原則、営業者から受ける利益の分配は雑所得とすることが明らかにされました。

*1 名古屋高裁平成17年10月27日判決(確定)
*2 平成17年度 税制改正の解説抜粋(措置法41の4の2関係)

税理士 大柳 和二