かかりつけ医と専門医
2014年04月01日
代表社員 佐藤 修一三月初旬、弊社代表の野本が、定期検診で「肺気胸」(肺の膜に穴があき、痛みや息切れがする病気)と診断され、約2週間の安静を言い渡されました。その後、1週間ごとに病状をチェックしておりますが、順調に回復に向かっているとのこと、まずは一安心です。
代表のかかりつけは某大学病院です。いつも診察する担当医は決まっていますが、診察結果の分析、治療方針の決定・実施については、担当医と他の複数の専門医が一緒になって、医療チームとして行い、常に最善の結果を追求するとのこと。
患者の立場からすると、とても安心感がありますよね。
税務調査でつのる不安感
先日、次のような税務相談がありました。
〔ケースA〕会社を設立して20年、一度も税務調査を受けたことがなかったが、「国際税務専門官」二人で調査に行きたいと連絡が入る……何故うちの会社に? 何か税金を追徴されるような悪いことでもあるのか? 何か特別な狙いがあるのでは? 現在の顧問税理士にも相談しているのですが、皆目検討がつかず、不安で不安で、相談に来ました。 ※国際税務専門官とは、主に海外取引の課税関係を専門に調査する調査官で、各地の主要税務署にのみ配置されています。
〔ケースB〕本店、支店、各営業所、社長宅に、予告なしで50人の税務調査官が一斉に立入る……過去に数回、税務署の調査は経験しましたが、今回は、某国税局の「資料調査第○課(※)」の調査官が、突然、会社や私の自宅に押しかけ、従業員や妻に質問をあびせてきました。皆はじめての経験で、何をどう答えてよいのやら、てんやわんやの状態でした。
※「マルサ」(裁判所の令状に基づく強制調査を担当)に対して、資料調査課はその頭文字から「リョウチョウ(料調)」と呼ばれ、主に、大口・悪質な納税者の調査を専門とする部署です。
一人税理士の限界
私も26年間で、税理士として既に100件以上の税務調査に立ち会ってまいりました。しかし、「国際税務専門官」による税務調査の経験は数回程度、ましてや、国税局「資料調査課」による税務調査にいたっては皆無です。これは私に限ったことではなく、ごく普通の税理士にも言えることなのです。
お客様企業の手前、プライドも多少あり、顔にはだしませんが、今回のケースのような未知の世界の税務調査は、何が調査の目的なのか、どこまで税務署が踏み込んで調査をして来るのか、既に何か追徴税額の確証をつかんで来ているのかなど、一般的な調査と違い、どこか不安で、調査対応に自信が持てない、というのが正直な気持ちです。
私ども税理士業界は、税理士が一人だけの個人事務所が圧倒的に多く、所長先生がすべての税目を、一人でカバーせざるを得ない現実があります。しかし、今回のような特殊な税務調査をはじめ、お客様企業のニーズの多様化、経済取引のグローバル化が進む中にあって、一人の税理士で全ての税務問題に対処すること自体無理があるように思うのです。
様々な診療科がある医療の世界同様、複数の税目を取扱う税理士も、本来、各税目のスペシャリストが知恵を出し合い、患者であるお客様企業にとって、最善の治療法を導き出し問題解決にあたるべきではないでしょうか。
餅は餅屋(もちはもちや)
私どもの事務所は、「税理士も医者と同じように、取扱う税務分野ごとに専門家が集結し最高のサービスを提供すべきである」という考えに立ち戻り、法人税、消費税、相続税、国際税務、事業承継などの専門家を国税局から迎え入れ、「税務総合戦略室」を組織しております。
私が、風邪や腹痛を一人で診察・治療するかかりつけの内科医だとするならば、「税務総合戦略室」のメンバーは、癌、脳、心臓などの特殊な病気をチームとして診察・治療する専門医集団といえます。
この間、歯が痛み出したので、以前にこの会報でも紹介した腕利きのK先生を約1年ぶりに訪ねました。治療後、私の娘の歯の矯正についてもお尋ねしたところ、次のような返事が返ってきました。「矯正専門の先生が毎月一回来ますので、その時相談にいらしてください」、と。
さすが、一流の先生は、「餅は餅屋」を心得ていらっしゃる……。
税理士 佐藤 修一