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成功者になるための法則その2-2~成功へのプロセス~

2019年01月31日

 前号では「成功者になるための法則 その弐」と題し、「成功者の定義」についてお伝えさせていただきました。多くの感想や質問を頂戴しましたが、中でも特に多かったのが「目標を達成する具体的な方法論を知りたい」というものでした。
 したがいまして、本稿では目標を達成し、成功者になるための具体的な実践方法を中心にお伝えいたします。

目標達成にはイメージと期限が必要

 前号で成功の定義として、ポール・J・マイヤーの「成功とは価値ある目標を前もって設定し、段階を追って達成していく姿そのものである」という言葉を紹介しました。既にお伝えした通りですが、この言葉には続きがあります。それは「目標を鮮明にイメージし、達成するまでの期限を決める」というものです。
 まさに、この続きの部分にこそ目標を達成する方法論が凝縮されているのです。「なんだそんなことか」と思われる方もいらっしゃるかも知れません。しかしながら、往々にして極限まで無駄を省いたシンプルな言葉ほどその本質を掴み取ることが難しいものです。
 要するに「目標を鮮明にイメージする」とは一体どういうことなのか。後半部分に関しても同様です。「達成するまでの期限を決める」とは具体的にどういうことなのでしょうか。

看板を眺めながら励んだ試験勉強

 この場合、具体例をお示しすることが最も有効だと思われますので、3つほど私自身の実体験をお伝えいたします。まずは、税理士試験合格に向けてのエピソードです。私は大学卒業後に税理士試験に臨みました。当初から雇われて働くつもりは毛頭なく、自分の事務所を構えることを目標としていました。
 そこで私は自室の壁に「野本会計事務所」と書いた看板をたてかけ、その看板を眺めながら試験勉強に励みました。この「野本会計事務所」という看板を実際につくり、日々眺めるという行為が「目標を鮮明にイメージする」という具体的な方法なのです。
 結果、昭和48年に、私は故郷いわき市に野本会計事務所を開業しました。開業当時、お客様は1社だけでしたが私はすぐに職員をひとり雇いました。このエピソードを同業の税理士の方にすると皆一様に驚かれます。何故ならば、独立した税理士は通常、お客様が20社~30社くらいになるまでひとりで対応するケースが大半だからです。そして対応しきれなくなった時点で職員を雇うのです。でも私はそのやり方は違うと感じていました。
 内部の事務作業は職員に任せて、自分の得意なことに、自分にしかできないことに集中しようと決めたのです。そこでまずは営業に特化しました。そして、事務所には常に実際の職員数の倍の数の机を準備し「この机をいっぱいにするぞ」と決めたのです。
 はじめは私と職員の2名でしたから、倍の4名分の机を準備しました。私は2名分の空席を日々眺め、新たな職員がそこに座って働く姿をありありと思い浮かべることができました。そして実際に4名になると今度は倍の8名分の机を用意し、今度は4名分の空席を眺めながら、未来の4人をイメージしたのです。これを繰り返し、13年目(昭和61年)には職員数45名、総床面積530㎡の事務所となりました。

イメージを形にして常に視界に入れておく

 また、前号をお読みになられた30代の男性から、「自分で家を建てるのが夢ですがとても実現しそうにない」といった内容のメールをいただきました。私は具体例として自分が家を建てた時のエピソードを伝えました。
 私は39歳の時、故郷いわき市に家を建てました。この時も私は「目標を鮮明にイメージする」ことにしたのです。具体的には、建築士に依頼して自分がつくりたい家の模型を作成してもらいました。1600㎡の土地に300㎡の平屋の日本家屋、居間には掘り炬燵、屋根は銅板葺きといったように、建てたい家のイメージを忠実に再現してもらいました。
 そして、それを飽きることなく眺め、あたかもそこで生活しているようなイメージを繰り返し抱きました。結果、イメージが現実に形になったのです。
 つまり、「目標を鮮明にイメージする」というのは、決して頭の中で想像するということではないのです。家であれば家の模型、憧れの人がいればその人の写真といったように、目標が実現した際のイメージそのものを形にして、常に視界に入る場所に掲げておくのです。

暦に刻んだ印が達成への励みに

 それでは後半部分の「達成するまでの期限を決める」とはどういうことでしょうか。これも、ただ頭の中で「この日までにこれをやり遂げる」と約束したとしても心許ないものです。ここで大切なのが「継続」です。ある期限までに目標を達成するには、日々の継続が何よりも肝要です。
 しかし「三日坊主」という言葉があるように、たとえ「健康のために毎日30分間のウォーキングをする」といった一見それほど難しくないようにうつることでも、日々の継続はなかなか上手くいかないものです。結局、1ヶ月も過ぎると、目標も期限も忘れてしまいます。そして、新年を迎え、神社にお参りに行き、目を閉じ、手を合わせ、「今年こそはこれを実現します」と誓うのです。そんなことをずっと繰り返してしまうのが、多くの人間の性だというのが実際のところでしょう。
 何故このようなことを繰り返してしまうのでしょうか。逆に言えば、このようにならないためにはどうしたらよいのでしょう。私は考えました。それはいたってシンプルなものです。
 毎日毎日、決めたことを実行した際に、カレンダーに印をつけていけばいいのです。この印が増えていくことで「もうこんなにやったのだから大丈夫だ」という自信につながり、さらに「他の人が同じように努力したとしても自分がやめない限り誰も追いつけまい」といった心の躍動となるのです。気づけば、日々の努力が苦痛ではなく、愉快、痛快になり、善循環していくのです。そして、このような積み重ねこそが、階段を昇っていき、ある期限までに目的を達成することにつながるのです。

失敗にめげない姿勢が大切

 ただ、ここで見落としてはならないことがあります。それは、たとえ日々継続して克己の心で努力を続けていても、決して階段を1段ずつコンスタントに昇っていけるわけではないということです。途中、足を踏み外し、4段、5段と一気に落ちてしまうことは、普通に生じます。つまり「失敗」です。
 しかし、成功するために最も大切なのは、この「失敗」にめげない姿勢です。
 私は、失敗こそが成功の母だと思います。私自身、過去を振り返ると、失敗の方が遥かに多いことに気が付きます。それはおおよそ10のことに失敗し、1つ成功といった具合です。ただ、この1つの成功の成果が、10の失敗よりも格段に大きいのです。

システム開発での失敗が教えてくれたもの

 ひとつ例をあげましょう。1990年代初頭、私は会計システム(DOS版)を開発しました。インターネットがない時代に、通信で会計事務所とお客様が繋がるという会計システムは日本初でした。そのため新聞、雑誌、テレビなど様々なメディアで取り上げられ、ニュービジネス協議会より「ニューアイディア賞」を受賞。さらに当時の通商産業大臣から特定新規事業の認定がなされ、年間売上高も25億円を突破しました。
 しかし、その後、大きく階段を踏み外すことになるのです。パソコンのOSがDOSからWindowsへと変わったのです。そこで、私どものシステムはDOS版でしたので、Windows版にソフトを作りかえる必要がでてきたのです。DOS版は町の小さなソフトウェア会社と共同で開発しましたが、今度は開発資金に余裕があったこともあり、2部上場の大きな会社にシステム開発を委託しました。
 ところが、システムが完成してもバグだらけで思うように動きません。結果、システムがきちんと完成するまでに時間だけが過ぎていき、ソフト発売の機会を失っていきました。
 また、ITバブルの崩壊も重なり、売上高はピーク時の3分の1になってしまい、Windows版の開発に費やした20億円が借入金として残ってしまいました。そして、銀行からの貸し渋り、貸し剥しにもあい、非常に苦しい時期を迎えました。
 ただ、私はこのことを「失敗」だと思いませんでした。当時、様々な方から「もうシステム開発はやめたほうがいい」と進言されましたが、私はそうは思いませんでした。Windows版の失敗を生かして、次は委託先企業の選定からはじめ、あらゆる点を改善しました。そしていち早くクラウドコンピューティングに対応した会計システムの開発に成功しました。仮にWindows版の失敗でめげてしまい、あきらめていたら今はないのです。

成功の秘訣は成功するまでやめないこと

 何につけ失敗すると「もう二度とやらない」とおっしゃる方をよく見受けます。こういう方は、何かをすれば絶対に成功すると思っているのです。この考え方が間違いなのです。
 故に、ちょっと失敗しただけで、ずるずると引きずってしまい、めげてしまうのです。
 私から言わせれば、こんなにもったいないことはないのです。失敗した時こそチャンスなのです。この失敗の経験を生かせば、一気に成功に近づくのです。逆説的な言い方になりますが、失敗ほど効率よく学べるものはないのです。
 成功する人は、いくら失敗してもめげません。そして、忘れてはならないのが、成功とは常にリスクと背中あわせだということです。ただ、果たしてこの世に命までとられるようなリスクがどれほどあるものでしょうか。何事かを成し遂げようとする際の大半のリスクは、たとえ失敗したとしても頑張れば再び立ち上がれるくらいのものに過ぎません。
 人生は有限です。本当は日々、勇気や行動や考え方といった、あなた自身が試されているのです。もし成功への第一歩を踏み出すことが怖ければ、半歩でもいいので足を前に出してみましょう。そこで大切なのが「目標を鮮明にイメージし、達成するまでの期限を決める」ことです。

目標の顕在化で潜在意識をコントロールする

 私がこのことを強調するには当然理由があります。それは本稿で具体例をあげさせていただいたように「目標を鮮明にイメージし、達成するまでの期限を決める」ことによって、潜在意識が機能するからなのです。この「潜在意識」が成功のための隠れたキーワードなのです。人間の意識には、顕在的なものと潜在的なもの(無意識ともいいます)がありますが、目標の実現と成功のためには、この潜在意識を如何に上手に活用することができるかにかかっています。
 顕在意識と潜在意識は、しばしば「氷山」にたとえられます。海面から顔をのぞかせている部分が前者で、海面下に隠れているのが後者です。この氷山の例のように、潜在意識は意識全体の9割を占めると言われています。潜在意識は文字通り潜在的な意識ですから、直接人間がコントロールできるものではありません。
 しかし「目標を鮮明にイメージし、達成するまでの期限を決める」ことによって、換言すれば1割の顕在意識による働きかけで、この9割の潜在意識を間接的にコントロールすることができるのです。
 巷間いわれていますように、潜在意識の力は無限といっても過言ではありません。うまく機能すると、その人の目標の実現のために世界が動いているのではないかと錯覚するくらいに、不思議と物事が順調に進んでいく瞬間を迎えることができるのです。それはたとえるならば、バラバラになっていたパズルのピースが自動的に組み合わさっていくような不思議な体験です。
 あなたも目標を鮮明にイメージし、達成するまでの期限を決めてください。そうすれば潜在意識が大きな力を発揮します。きっと、今まで夢で終わっていたことがいつの間にか達成した新しい自分に気がつくことでしょう。

 創立者 野本 明伯