成功者になるための法則~お洒落であり続けること~
2018年12月11日
創立者 野本 明伯若さとは何なのか
開業以来、40年間、税理士として実に多種多様な経営者の方とお会いしてきました。その中には、高齢であっても「若々しさ」を感じさせる方と、そうでない方がおります。逆に、実年齢は若くても「若々しさ」のかけらもない方もおります。
経営者をはじめとする様々な方にお会いする中で、私は、果たして「若さとは何なのか」と思うに至りました。過日、テレビ番組を通じ、とあるお二方を目にし、この疑問に関して「なるほど」と腑に落ちるものがありました。
おひとりは、紳士服量販店で業界第二位のAOKIホールディングスの会長である青木擴憲(あおき・ひろのり)氏です。青木氏は71歳というご高齢にもかかわらず、番組内では「自称48歳」と公言され、現場で若手社員とともに精力的に働く姿が印象的でした。
もうお一方は、フォトジャーナリストの笹本恒子(ささもと・つねこ)氏です。日本初の女性報道写真家であり、御年97歳となった今もなお、現役で活躍されています。番組ではドキュメンタリー形式で笹本氏を追っており、全国各地を取材や講演で精力的に飛び回っておられる姿が脳裏に焼き付いています。
お二人に共通するのが、まったく年齢を感じさせない「若々しさ」でした。多くの場合、定年退職を迎え、ビジネスの現場から離れてしまえば、途端に若々しさが失われていくものです。
しかしながら、お二方はまるで40代、50代のように、まさに人生における仕事の最盛期を生きておられ、前向きで、あふれんばかりの生命力が画面を通じてもひしひしと伝わってきました。そこで、ふと、私はお二人の若々しさのもととなる、ある共通点に気付いたのです。それは、「お洒落」ということです。
お洒落が生み出す成功への意欲
かくいう私も「お洒落」に関しては、思うところがあります。今から40年前、故郷である福島県いわき市で、私は税理士事務所を開業しました。28歳でした。開業当初は、6畳一間に机ひとつといった、とても事務所とは呼べない代物でした。
その頃、30代半ば過ぎの男性のお客様にこんなことを指摘されました。
「野本君、残念だがお客は見た目で判断するのが現実だ。起業して間もない中で、立派なビルを構えろなんて無理難題は言わない。でもスーツくらいは、既製品の吊るしのものではなく、フルオーダーでちゃんと自分の身体にあったものを作りなさい。ビジネスマンはスーツが武器なんだから。そういうことに無頓着で、仕事ができる人なんていないものだよ」
その方は、百貨店の出店に関わる商品仕入の責任者を担当されていた方で、まだ世の中を知らない私に対して、真摯にビジネスの本質を教えてくれたのです。そしてこうも言いました。
「君は税理士だろ。今後、成功者と接触する機会もあるだろう。でもそんなスーツを着ていたら値踏みされるよ。それは言い換えれば、人間の中身を値踏みされていると一緒なんだ」
私はすぐにいわき市のテーラー屋でスーツを仕立てました。真冬のことで、ズボンに足を通した瞬間に、温かさがまるで異なることに驚きました。上着の袖に手を通すと、その滑らかさに鳥肌がたちました。ネクタイを締め直し、鏡の前に立つと、自然と背筋が伸び、不思議なことに「俺は絶対成功するぞ」といった思いが、ふつふつと熱を帯び、湧き上がってきたことを覚えています。「なるほど、こういうことなんだ」と痛感しました。以後、現在に至るまで、40年間、私はスーツとYシャツはすべてフルオーダーで作り続けています。
スポーツカーに乗ることの意義
またある時は、車に関してご助言をいただきました。
「野本君、税理士っていうのは何でみんなクラウンに乗りたがるのかね。みんな一緒で。いかにも税理士らしい税理士で面白くもなんともないね。君もやっぱりクラウンがほしいのかね?」
当時の私は開業して3年ほどが過ぎた頃で、徐々に事務所経営も軌道に乗りはじめていましたが、車は中古の日産サニーに乗っておりました。私は突然の問いに答えに窮したことを今でもよく覚えています。黙っている私をみかね、その方は、
「そうか。じゃあフェアレディZを買いなさい。若さと行動力をアピールするんだよ」
とあたかもそれが当然かのように仰いました。予想もしない提案に驚いている私に、その方は続けました。
「それで60歳を過ぎたらベンツじゃなくて、赤いスポーツカーに乗るんだよ。まだまだ若くバリバリだということをアピールするんだ。要するに、そうやって人に見せれば、自然と自分自身の中身もそうなっていくものなんだよ」
スーツと同様、私は借金をしてフェアレディZを買いました。フォルムが美しく、ひとたび運転席に座ると、それはただの移動手段の箱ではなく、豪快なエンジン音は私に勇気を与えました。
「なるほど、こういうことか」
フルオーダーのスーツで鏡の前に立った時と同じ感情が湧き上がってきました。顧問先のお客様から幾度も、「お洒落だね」と口々に仰ってくれました。
「まずは形から」始めよう
誰しも「お洒落ですね」と言われて気分を害する人はいないでしょう。人間には、他者から認められたいという承認欲求が備わっているのです。そして、褒められた体験を持つとそれが癖になり、さらにお洒落を重ねます。その繰り返しの中で、気力、体力が漲り、お洒落のみならず、仕事での成功や人生の目標の達成による承認欲求をも求めていくようになるのです。
思い起こせば、私が40年の税理士人生の中で見てきた成功者はおしなべて「お洒落」でした。では、「お洒落」とは何なのか。私は、一言でいえば、生命力の裏返しだと考えています。お洒落をする、ということは、衣類や装飾品などを身に着け、他者から自分を区別して際立たせる、いわば自己表現の一種です。
人間、中身を一流にするのは途方もない時間と自己投資、自己鍛錬が必要です。しかしスーツをはじめとする身だしなみは、ちょっとした無理をするだけで可能なのです。かくいう私も、はじめてのオーダースーツもフェアレディZも、当時の収入からすると相当無理をして手に入れたのです。外身を整える、つまり、「お洒落」であり続ける努力をしているうちに、自然と自信や意欲がわき、徐々に中身も追いついていくものだと、この年になってあらためて痛感しております。
来年で70歳になりますが、私は自称「49歳」です。「今日も素敵ですね」と言われ続けるために、毎朝、その日のスケジュールや気分にあわせ、スーツを選び、Yシャツ、ネクタイとあわせ、帽子を選びます。そして、最後に靴を決め、一日が始まるのです。
創立者 野本 明伯