想定通りに調査ストーリーが展開
2018年09月25日
代表社員 佐藤 修一 「やっぱり来たか……」。先月の上旬、韓国から輸入取引がある3月決算のM社様に、消費税の税務調査が入りました。実は、今回の調査は、5月末日に決算申告書を税務署に提出した時点で、9割がた覚悟していたものでした。
というのも、M社様の今期の決算内容は、赤字のため法人税はゼロでしたが、約400万円の消費税還付申告だったのです。しかも、その主たる還付理由が、輸入消費税に起因するものでした。
調査官曰く、ここ最近、輸入消費税の不正還付が多発しており、消費税調査の重点項目の一つになっている、とのことでした。
覚悟していた税務調査
M社様の税務調査にいたるまでの経緯を、時系列で振り返って見ましょう。図Ⅰをご覧ください。
還付申告と調査リスク
ある程度は覚悟していたものの、6月下旬に届いたお尋ね文書の担当部署を見たとき、消費税の税務調査が入ることを100%確信しました。その担当部署欄には、「法人課税第2部門」と書かれていたのです。
この法人課税第2部門は、税務署内部で「主担(しゅたん)部門」と呼ばれ、主に、消費税や印紙税といった間接税(※)の調査を専門に行う部署なのです。
通常、税務署が受領した消費税申告書は、一旦すべて主担部門に集められ(一方、法人税申告書は法人課税第1部門に集められます)、中でも消費税還付申告書については、その内容を精査したうえで、次のような手順を踏み、納税者に還付されることになります。
- ①還付申告の内容通りに、そのまま還付する。
- ②還付申告の内容について、文書
- (図Ⅰの「消費税還付申告の内容についてのお尋ね」を指します)による照会をしたうえで、還付する。
- ③実際に会社に出向き、税務調査を実施したうえで、還付する。
M社様の場合には、②→③という手順を踏むことになりました。
(※)間接税と直接税 … 間接税とは、税金を納める義務がある者(納税者)と、税金を負担する者(担税者)が異なる税をいいます。これに対して、直接税とは納税者と担税者が一致する税をいいます。例えば、主な税目としては、間接税に、消費税、印紙税、登録免許税、酒税、たばこ税等、直接税に、法人税、所得税、相続税、事業税、固定資産税等があります。
元国税調査官の読みが的中
冒頭に申し上げましたように、今回の消費税に関する税務調査は、事前に予測できていたため、M社様のご協力のもと、十分な対応策を講じることができました。
調査官が、どのような手順で調査を進めるのか、どのような資料をチェックするのか、どこに重点を置いて調べるのか等など、M社様の担当スタッフと複数の元国税調査官との間で、十二分にシミュレーションを重ねました。
弊社の国税OBメンバーの中には、国税当局時代、まさに「主担部門」に在籍し、消費税や印紙税の調査を専門に行っていた元国税調査官がおります。案の定、そのメンバーの指摘通りに、お尋ね文書に回答した途端に税務調査の連絡が入り、調査手法、質問項目、提出資料、そして消費税調査の狙い目にいたるまで、ほぼ100%といっても良いぐらいに、読みが的中し、想定通りに調査ストーリーが展開されました。
税務調査は、一言でいうならば税務署との交渉です。上手に交渉して、余分な税金を納めないようにするためには、まず相手やその手の内を熟知する必要があります。その意味においては、国税OBメンバーは、税務当局の内部事情や調査官の思考回路が手に取るように分かります。税務調査のプロを上手く活用することで、税金コストは大きく左右されるのです。
代表社員・税理士 佐藤 修一