71歳 青春の夢
2018年06月25日
創立者 野本 明伯 経営計画は、中小企業経営の核となるものです。ここをしっかりしなければ、いかに技術をもっていても、有能な人材がいても、会社は発展していきません。
中小企業の経営計画というのは、私は経営者自身の夢ではないかと思います。「人は実現できない夢はみない」と言われますが、まさにその通りです。何事も「夢ありき」。
まず経営者自身が夢を抱き、語らなければ、会社は決して良くなっていかず社員も幸せになりません。
その経営者の夢、つまり経営計画とは、数字(経営数値)と先見性(時代を読む力)に裏付けられていなければなりません。
経営者は詰め将棋を詰ますように頭の中で精密な道筋を描き、それを経営計画に表現して駒(社員)を動かすのです。
そしてうまく詰ますことができたとき、社長は経営の醍醐味というものを味わうのです。
前回は、一貫した経営理念をもとに歩んできた当社の足跡を振り返りました。今回はいよいよ私の夢と、当社の今後3か年の計画を語ってみたいと思います。
百年続く百億円企業を目指して
私の夢は三つあります。
一つ目は、百年企業です。百年継続する企業の礎を、これからつくっていきたいと思います。
しかし、ただ百年続けばいいわけではありません。百年企業であると同時に、百億円企業です。百億円の年商を継続できる百年企業をつくりたい。これが一つ目の私の夢です。
二つ目の夢は、社員の待遇です。
私は、わが社で働く人に最高水準の給与と待遇を与えたいのです。
社員のみなさんは、社長である私の夢を実現するために、一致団結して働いてくれています。
自分の人生の大事な部分を、会社のために使ってくれているのです。人間として最も成熟している時期、スキルが高く価値ある仕事を旺盛にこなせる人生最盛期を会社のために捧げてくれているのです。
私は、そんな社員にできるかぎりの待遇を与えたい、どこよりも高い給料を払ってあげたいと、心の底から思っています。
もちろん会社は社員に「教育」というものを与えてはいますが、だから給料は安くてもトントンだとは言いたくありません。
社員は自分たちの生活の糧を得るために働いてくれているのです。やはりお金で応えてあげることが大事だと思います。
そして、いずれ退職したときには「ああ、自分はいいところに勤めた、自分の人生の一部を捧げるに相応しい会社だった」と心から思っていただけるような企業にもしたいのです。子どもや孫ができたときに、「私はこの企業で一生懸命働いてきたんだよ」と自慢できるような会社にしていきたいのです。簡単ではありません。
しかし、経営者がいつも「そういう会社になりたい」と願っていれば、必ずそうなっていくと思っています。
高齢者への「心のサービス」とは
私の三つ目の夢。これは少し考えると現実味がなさそうな、本当に夢らしい夢です。でも、ひょっとしたら実現するかもしれません。
その夢とは、高齢者も安心して家族と暮らせる高級総合居住センターをつくりたい、ということです。
これは、いままでの世の中の概念にはないものです。もし実現すれば、日本の社会を変えていく流れになっていくかもしれません。
簡単に言えば、医療、介護、さらに地域交流やエンターテイメントなども含めた総合的なサービスが組み込まれている、すべての世代のための共同住宅システムです。
これまでの概念で言えば「高級老人ホーム」ということになるかもしれません。しかし、私のイメージはまったく違います。
私は、いま自分が住んでいる六本木のレジデンスを思い描いています。そこに子どもから年寄りまで、かつてのような大家族が暮らしています。やがてお年寄りに医療や介護が必要になったときは、同じレジデンス内の別棟の部屋に移ります。とりあえずわかりやすいように「介護棟」と呼ぶことにしましょう。
「介護棟」は、従来の老人ホームにあたる概念で、医師も看護師もヘルパーも栄養士も、必要な専門家はすべて常駐しています。
しかし、決して家族と離れてしまうわけではありません。それまで一緒に暮らしていた家族、孫も子どもたちも自由に遊びに来ることができ、食事も一緒にできます。
これを田舎ではなく、都心のど真ん中に建てるのです。
これから高齢者が増えていく世の中では、人生の最後をいかに幸せに送ってもらえるかを考えたサービスも強く求められるはずです。
医療、介護、あるいは生涯学習のような単なるサービス提供だけでなく、一人一人の心へのサービスも重要視されてくると思います。
いくつになっても孫と一緒に住める、病気になっても年寄りになっても家族と暮らせる。家族にも負担がかからない。そういう状況が約束されているということは、高齢者へのいちばんの心のサービスになるのではないでしょうか。
引退後も愛する社員と過ごしたい
この私が思い描いている高級総合居住センターは、じつは私が入る所なのです。老後はここで最後の時間を幸福に過ごしたいという私の夢です。
私はここに、当社で一緒に働いているスタッフたちも入ってもらえるようにします。
当社の定年は今後、65歳~70歳くらいになるかもしれません。高齢になるまで私どもの会社に人生を捧げてくれる人に、老後の不安など抱えさせたくありません。
そんなストレスとともに仕事をさせるのは忍びないのです。社員のそんな不安を解消する手助けをしてあげるのも、経営者の仕事の一つだと思っています。
私は夢を語ることが大好きですから、社員のみんなと居酒屋でそんな話をしたことがあります。みんな大喝采で喜んでいました。
さすがに世の中すべての人にをお招きするのは不可能ですが、愛する社員には特別料金で入ってもらって、そこで家族と暮らしながら当社の仕事に励んでいただきたい。引退してもそこで家族と暮らしながら余生を楽しみ、療養や介護が必要になったら、そのまま「介護棟」に行けばいい。何も心配はないのです。
そうなれば、私は引退後もわが社の仲間たちと一緒に老後を過ごすことができます。愛する社員たちの面倒を最後までみて、自分も家族や元社員のみんなに囲まれている。そんなことができる会社なら素晴らしいなと、ひそかに思い描いている夢のまた夢です。
夢実現のための目標設定・行動計画
さて、私はこの三つの夢をどのようにして実現するのでしょうか。
夢はただ見ているだけでは現実になりません。夢を実現しようと決断したら、そこにつなげるための小さな目標を設定し、その目標を達成するための行動計画を立てていきます。そして、修正、再設定、実行をくり返しながらその道を歩いていけば、やがて夢は実現するはずです。
私はこれを株式会社エヌエムシイおよびエヌエムシイ税理士法人の経営計画に落とし込んだのです。
まずエヌエムシイ税理士法人は、二つのジャンルを持っています。
一つは帳簿付けや決算申告など、ふつうの会計事務所が行っている一般会計業務。
もう一つは税理士法人内に設置した「税務総合戦略室」で行っているコンサルティング業務です。
一般会計部門では、現在新しいお客様の成約が月に6件くらいずつ上がっています。年間で70~80件程度になります。一般的な会計事務所としては、なかなか優秀です。
しかし、お客様が月に6~7件増える会計事務所のビジネスモデルは、私は過去のものだと考えています。それで満足していたら時代に対応していくことはできません。
これからは1か月に新規契約を70件、80件と取れる会計事務所でなければいけません。これまでの10倍、年間で1000件近いクライアントが増える会計事務所でなければ生き残っていけないのです。
そのためにどうするか。
私は今後3年間でそんな事務所に変革していくために、今年度の経営計画をつくりました。その具体的な戦略は残念ながらここで公開できませんが、「これに沿って進んでいけば必ずできる」という青写真はできあがっているのです。
振り返れば、時代は変化している
読者のみなさんは私を「無茶なことを言う経営者だ」と考えるかもしれません。しかし世の中には、時代の流れを先取りしてつかんだことで、もっと大きなマーケットを獲得している企業がゴロゴロしています。
たとえば、理容室業界です。昔ながらの理容室はめっきり少なくなり、『QBハウス』が日本中にできています。たった10分でヘアカットだけ行い、顔剃り・シャンプー・ブローは行わず、料金は1000円。散髪後は掃除機で毛を取り除くそうです。
90年代の終わりごろから増えてきましたが、最初は「そんな店がはやるのか」とバカにしていました。
ところがいまや国内はもちろん、台湾、シンガポールなどにも出店して、年商は百三十億になるそうです。
理容室は年商5000万で大成功というのが常識でしたから、これはとんでもないイノベーションです。その成功のカギが、変化への対応です。忙しい、不景気だ、もっと合理的に髪が切れないかという、たくさんの人々が潜在的に持っていたニーズに的確に応えた結果です。経営者のアイデアだけで、いとも簡単にこれだけ変わるという例です。
喫茶店もそうです。街の喫茶店はほとんど消え、『スターバックス』などのカフェチェーン店に変わりました。たまに古い喫茶店に入ると、年配の方が昔を懐かしむようにゆっくりコーヒーを味わっていますが、若い人やビジネスマンは皆無です。カフェチェーン店で軽くスマートにコーヒーを楽しむのが当たり前になっています。これも時代を先取りし、その変化に対応した結果でしょう。
会計事務所も、1万社のクライアントを抱えるところが現れてもおかしくはないのです。感覚を研ぎ澄まして時代を眺めてみると、それは見えてきます。
会計ソフトのユーザーに還元したい
さて、もう一本の柱である「税務総合戦略室」は、発足から4年たって、当初2名だったスタッフが12名になっています。
今後はこれを30名態勢に拡大し、税金に関する日本一のコンサルティング・オフィスにしたいと考えています。『日経新聞』の全段広告を3年間続け、北海道から沖縄まで日本全国からお客様がみえます。
これをさらに強力に進めて日本一の税務専門部隊をつくりあげたい、そう考えています。
また株式会社エヌエムシイの会計ソフトウエア事業については、さらに使い勝手のよいものを目指して開発を続けていきます。
そのうえで、税理士法人の一般会計部門における新しいビジネスモデルが成功し、年間で1000件もの新規契約が取れるようになったら、その成果を私どもの会計ソフト(キャッシュレーダーPBS)のユーザー事務所に提供したいと考えています。
新規のお客様を差し上げるのです。そしてそれぞれのユーザー事務所に地域ナンバー1会計事務所になっていただき、長年キャッシュレーダーを使ってよかったと、心から思っていただけるようにしたいのです。私はこれから後継者を育成して、3年後には社長を退いて会長になるつもりです。しかし、一歩下がっても、やはり生涯現役を続けていきたいと考えています。
やはり私は仕事をしているときがいちばん活き活きしていると、自分でも思います。仕事を辞めて1か月後に死にたい、いや仕事の途中でもいい、そんなふうに思っています。
私の人生、最後まで夢の途中です。夢だけが残ったら、生まれ変わってその夢を実現したい。そう思っているのです。
創立者 野本 明伯