オーナー社長よ、もっと自信を持とう!
2018年04月10日
創立者 野本 明伯オーナー社長とは何者なのか
日本の企業の9割以上は中小企業です。そして中小企業のほとんどがオーナー企業です。日本の経済はオーナー企業が支えていると言っても差し支えないでしょう。
でもオーナー社長は、それに相応しい報酬を得ているでしょうか。成功を手にしているでしょうか。私には、とてもそのようには思えません。
その理由はオーナー社長自身にあると、私は考えています。オーナー社長自身、オーナー社長とは何者なのか、どういう存在なのかを理解していないために、オーナー社長は成功できないのです。
中小企業の経営者が自分で思い描く社長像は、じつは自分とはまったく違う大企業の社長像です。このため自分がオーナー社長であることを見失っています。そのことが結局は、苦労ばかりで報われない薄幸の中小企業経営者で終わってしまう大きな原因になっているのだと思います。
今回は、オーナー社長とはどんな存在なのかをあらためて掘り下げ、なぜオーナー社長は報われないのかを考えてみたいと思います。「オーナー社長とはなんぞや」ということをオーナー社長自身がしっかり理解することは、中小企業経営の成功の秘訣であり、またオーナー社長自身の人生をハッピーにするために欠かせない重要事項なのです。
オーナー社長にのしかかる重責
上場企業のオーナーは、言うまでもなく株主です。中小企業は社長が自社株を持っているので、社長自身がオーナーになるわけです。この違いの意味がわかるでしょうか。
たとえば、企業は銀行からお金を借りて事業を行います。大企業も中小企業も変わりません。ところが借入の条件は、大企業と中小企業では大きく異なるのです。
中小企業が銀行からお金を借りる場合、必ず社長の個人保証を求められます。会社の土地などの担保がいくらあっても、社長の個人保証がなければ銀行はお金を貸しません。
個人保証とは、会社が借金を返せなくなったときに社長個人(あるいはその家族)が債務返済を保証する、ということです。いかに従業員のミスでそうなっても、社長の個人的財産で負債を埋め合わせなければならないわけです。いかに高額の給料を払っている優秀な幹部がいても、その幹部が会社の債務責任を負うことはありません。借入はあくまでもオーナー社長個人の責任なのです。
大企業ではどうでしょう。個人保証など必要ありません。たとえ会社が破綻しても、社長個人に返済義務はありません。社長は辞職して終わりです。
中小企業のオーナー社長は、自分でお金を借りて、それを会社に運用しているのと同じなのです。つまり中小企業が借りたお金は、究極は社長個人のお金だということです。
「もしも失敗したら、すべてあなた一人の責任です」という十字架をいつも背負いながら経営をしている、それがオーナー社長なのです。
「最後は一人」がオーナー社長の宿命
お金だけではありません。オーナー社長は、人のことでも大変な苦労をしています。
会社の業績が良いときは、幹部も一緒になって大騒ぎでついてくるものです。会社のために身も心も捧げて頑張ってくれます。ところが業績が悪くなれば、少しずつ陰りが見えてきます。そして本当にどん底が近くなれば、優秀な幹部社員から会社を逃げていくものなのです。
これも中小企業の宿命です。ほかの誰を責めることもできません。すべてオーナー社長のせいなのです。
したがって、オーナー社長はいかに信頼できる優秀な幹部がいても、最後まで信じられるのは自分だけ、ということになります。もちろん、信頼を置いて仕事をしてもらうわけですが、100%信じて頼りすぎれば痛い目にあいます。そのあたりのバランスを意識して冷静に経営を進めていかなければなりません。
それはどこまでも孤独な闘いです。私自身、誰にも愚痴を言えない裏切りを何度も味わわされてきました。振り返ってみれば、そうした苦い経験を重ねることで、自分自身の器を大きくしてきたようにも思います。これもオーナー社長の姿です。
オーナー社長よ、ワンマンたれ!
オーナー経営者は「みんなで経営しているんだ」なんて甘いことを考えてはいけません。会社経営の代償として莫大な個人責任を抱えているのです。事業の失敗は人生の破綻にまでつながるのです。助けてくれる人はいないのです。
それだけの重責を担って経営を進めていくなかで、従業員の幸せ、お客様の満足、社会への貢献、会社の成長、そして自分自身の人生の夢の実現という、さまざまなハードルをクリアしていくことが求められています。それが、オーナー社長です。
そのようなオーナー社長が、会社の舵取りを、まったく責任のないほかの人に任せてよいのでしょうか。「ボトムアップ」とか「参加型経営」といった、聞こえのよい言葉につられてふらふらと、手綱を放してしまってよいのでしょうか。最終的には責任のない従業員たちが、いったいどのように経営を航海できるというのでしょう。
創業して会社が軌道に乗るまでは、どんな社長もワンマンでやるしかなかったはずです。すべて自分が判断してギラギラと行動してきたはずです。だからこそ会社は軌道に乗るのです。ところが会社の規模が大きくなって分業体制も確立されてくると、気がついたら従業員の顔色をうかがい、部下の意見を尊重する経営をやってしまっている。そういうオーナー経営者はとても多いのです。
それは絶対にダメです。いかに組織を工夫しても、オーナー経営者の権限を従業員に分割してはいけません。オーナー経営者だからこそ、自分のたった一回の人生を賭けて死に物狂いで仕事ができるのです。オーナー経営者だからこそ、会社を発展させるアイデアが生まれるのです。自分の意見は抑えて、従業員の意見を重要視して仕事を進めるようなオーナー社長は、大企業のマネをしてカッコつけているだけです。そこに成功はありません。
すべてのオーナー経営者は「ワンマンでなければいけない」と私は考えます。自分がワンマンであるというところに、社長は絶対的な自信と誇りを持たなければいけないのです。
社長報酬は、取れるだけ取っていい
中小企業のオーナー社長は、従業員の何十倍も働いています。オーナー経営者の頭はいつも、24時間動いています。勤務時間外の無意識のような状態も含め、いつも経営のことを考えています。それだけの責任とプレッシャーがあるからです。そのストレスは、従業員の何十倍にもなっているはずです。
もちろんそれは、オーナー経営者だから仕方のないことです。ぼやぼやしていたらやられてしまう世の中に打って出たのですから、その苦労も当然でしょう。それは従業員に求めるべきものではなく、オーナー社長にしかできない、オーナー社長が味わうべき苦労なのです。
ところがその割には、私は中小企業の社長の給料は少ないと思います。たくさんの会社を見てきましたが、社長の給料はその会社の最高給の従業員の3~4倍程度が一般的です。それは少なすぎます。10倍くらい取っていいのです。オーナー経営者はたくさんの給料を取って豊かになり、自信をもって経営にのぞまなければいけないからです。むしろ、高給を取ることは、社長の務めなのです。
ところが、ほとんどのオーナー社長は遠慮しています。それはやはり、自分の思いを込めた会社がかわいいからです。だから、生活に必要以上のお金は、あえて自分で取らず会社につぎ込んでしまう。もっと会社を良くしたい一心で、自分の給料を下げてしまう。それが当たり前になってしまっているのです。
そうやって苦労とストレスばかりの社長人生を続け、気がつけば自分の将来さえないことに気づきます。あるとき、「オレは何のために会社経営をやってきたのだろうか」と、そんな思いにとらわれるのです。
社長の退職金を長期的に準備する
中小企業の社長は、退職金を十分にもらえないことが少なくありません。税法上、損金として認められる非課税範囲の退職金さえ、会社に残っていないからです。
実を言うと、私自身がそうなのです。もう40年も社長をやっていますから、経費として計上できる私の退職金は何億という額になります。しかし、そのようなお金は会社に用意されていません。私自身、オーナー社長とはなんぞや、ということがわかっていなかったのです。
オーナー社長は、退職金の額も自分で決められます。だから40代のころから「自分はいつごろ引退して退職金はいくらもらう」と計画を立て、プランを実行し、引退するときにはその額をもらえばよいのです。40代のばりばりの時代に退職のことなど考えもしない社長は多いのですが、じつはオーナー社長のハッピーライフのためにはこのような資金計画はとても重要です。
引退後も豊かな人生があるということがわかっていれば、社長としてのストレスはそれだけ少なくなるでしょう。現在も未来も豊かで、ワンマンに、いつも大きな夢を語っていなければならないオーナー社長です。退職金資金の長期計画は、経営にも良い影響を及ぼすことでしょう。これは私の反省でもあるわけです。
20年間で退職金3億円を用意する
そこで、少し調べてみました。例えば45歳のオーナー経営者が「65歳で引退して3億円の退職金をもらう」という将来設計を立てたとしましょう。
その場合、まず1億円のお金を会社でつくります。名目はなんでもいいので、銀行から借りるのです。その1億円で、社長が海外の生命保険に入ります。そして20年後、65歳になって退職するときに解約すると、3億2000万円くらいのお金が会社に入ってきます。これをそのまま社長の退職金として、個人で受け取ればよいわけです。
大事なのは、このあとです。退職金は税引き後、2億5000万円くらい手元に残ります。その2億5000万円で、今度は個人で新たに海外の生命保険に入るのです。
これを5年間だけそのまま寝かせておくと、70歳からは毎年500~600万円の配当が入ってくるようになります。豊かに暮らすための年金です。こうして豊かな生活を楽しみながら90歳で亡くなったとすると、そのとき4億円くらい保険金が入ります。これは、そのまま配偶者や子どもたちの納税資金や財産とすることができるわけです。
ここまでシナリオができていれば、オーナー社長の現在はもっと元気ある、明るいものになるでしょう。
会社を引っ張っていく自信とは
お金のことを考えることは、決して卑しいことではありません。もちろん経営者には哲学も理念も精神性も必要ですが、同じくらいお金は大事です。
「貧すれば鈍す」と言われるように、金銭的に豊かであること、お金の心配がない状態が、優れた哲学・理念・精神性を生むのです。オーナー社長ほどお金のことでストレスを受ける存在はないのですから、まずは現在も将来も自分が金銭的に豊かな状態にあることを優先して考え、計画・実行しなければいけません。それが、会社を引っ張っていくオーナー社長のあるべき姿です。
オーナー社長はもっともっと自信を持たなければいけないのです。自分を豊かにして、意気揚々とオーナー経営者の人生を歩んでいくのです。その姿に、人はついてくるのではないでしょうか。従業員にお願いしてついてきてもらうのではなく、社長自身が人を引っ張っていく強さを持つのです。人を共鳴させるものを持つのです。
オーナー社長ほど重責を担っている者はいません。それに見合った豊かさを得ることで絶大な自信を獲得していく。そんなことはほとんどのオーナー社長は考えませんが、私は非常に重要なことだと考えています。
創立者 野本 明伯