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税理士コラム

少額減価償却資産(その1)2016年08月16日

 法人又は個人とも事業活動を行うためには様々な資産を必要とします。
 そして、その資産を取得するための金額は、資産の種類によりますが数万円から数億円単位の金額となります。
 経営者としては、これらの資産を取得するために投資した金額はできるだけ短期間の間に費用化して課税の操り延べを考えたいところです。
 企業会計上、取得した資産は減価償却資産と捉えてその使用可能期間にわたって経済的価値の減少を減価償却費として費用化していきます。その場合、資産の取得金額が少額で重要性が乏しいものや使用可能期間が短いものについては資産として取り扱わずに減価償却を省略しても期間損益に与える影響は僅少と考えられることから、重要性の原則に沿って取得時の費用として処理することが認められています。
 税務上も取得価額が10万円未満の少額減価償却資産又は使用可能期間が1年未満の減価償却資産については、一時の損金として処理することができます。
 また、取得価額20万円未満の減価償却資産については法定耐用年数にかかわらず、事業年度ごとに3年間で償却できる一括償却資産の均等償却制度があります。
 さらに、青色申告法人で一定の中小企業者等に限っては、取得価額30万円未満の減価償却資産について、年300万円を限度として一時償却することができる特例制度があります。
 これらの3パターンの減価償却資産の概要等を簡単にまとめると次表のとおりとなります。
 これらの制度はいずれも取得価額が重要なポイントとなっています。今回から2回に分けて、これらの少額減価償却資産に関する各制度を適用するに当たっての取得価額の判定及び適用の際の留意点について説明していきます。

取得価額の判定

 次表を見てもわかるようにこれらの制度を適用できるかどうかの重要なポイントは、取得価額がそれぞれ10万円未満、20万円未満、30万円未満の減価償却資産が対象になるということです。
 この場合の取得価額は通常1単位として取引されるその単位で判定することになります。
 法人税基本通達7-1-11では、「通常1単位として取引されるその単位、例えば、機械及び装置については1台又は1基ごとに、工具、器具及び備品については1個又は1そろいごとに判定し、構築物のうち例えば枕木、電柱等単体では機能を発揮できないものについては1の工事ごとに判定する」とされています。
 また、通常1単位として取引されるものが、事業者の特定の事業目的により複数組み合わせで事業の用に供されていても、事業の用に供されたこれらの資産が構造的・物理的一体性を有することなく個々に機能的独立性を保っている場合には、少額減価償却資産の判定単位は、複数組み合わされて事業の用に供されている個々の資産ごとに判定します。
 例えば、会議室等で使用する会議用折りたたみテーブル30台(単価5万円)と椅子90脚(単価5千円)を購入した場合ですが、この場合、折りたたみテーブルと椅子は1台又は1脚を1単位として通常取引されるものと考えられます。そうすると、1台又は1脚の取得価額がそれぞれ5万円、5千円であるから、少額減価償却資産に該当することになります。
 なお、応接セットのテーブルとソファーの場合、それぞれが単独で使用できなくはないが通常は1組として取引されていることから、1セット(テーブルとソファー)の取得価額で判定することになります。
 参考 法人税基本通達逐条解説(第八訂版)

元国税調査官・税理士 大柳 和二

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