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税理士コラム

費用の計算について(第1回)2016年05月16日

会社オーナーや個人事業者の皆様におかれましては、多額の利益が出た場合は、何とか費用の額を大きくして利益のバランスをとりたいと考えるところです。
 法人税及び所得税の課税所得計算上、売上に対応する売上原価、そして販売費、一般管理費、その他の費用が費用として計上されます。
 この場合、法人税法及び所得税法とも売上の計上については権利確定主義により、売上原価については売上と同じ年度に計上することとし(費用収益対応の原則)、販売費、一般管理費については、原則発生した年度の費用(期間対応)として計上するとしていますが、債務の確定しないものを除くとしています。
 法人税法及び所得税法とも、それぞれの基本通達で様々な費用の計上の取扱いについて定めていますので、「何が」、「いつの事業年度(年分)の」費用に算入されるか、つまり、費用に算入できるもの、また、費用に算入できる時期を押さえておくことが税金対策には重要なことです。
 そこで、法人税を中心に主な費用の項目別に実務上の取扱い及び考え方について説明していきたいと思います。

法人税法における債務確定

法人税法第22条に各事業年度の所得金額の計算について規定があります。同条第3項第2号にその事業年度の損金に算入すべきものとして、その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用がありますが、償却費以外の費用で、その事業年度終了の日までに債務の確定していないものを除くと規定しています。これを債務確定基準と呼んでいます。
 企業会計原則においては、損益の計上について、発生主義の原則によりますが、法人税法では、費用の発生をいかなる基準でとらえるかということから、法人税法22条第3項第2号は債務確定基準を宣言したもので、発生主義に対して税制面から規制したということになります。
 これは、課税の公平を維持するために法人の恣意的な計算を避け、外部との取引については、債務が確定しているものが費用になるものとしたことによります。
 これを受けて、法人税基本通達2-2-12(債務の確定の判定)は次に掲げる要件のすべてを満たす場合に債務が確定しているという基準を定めています。

  • ① その事業年度終了の日までに、その費用にかかる債務が成立していること
  • ② その事業年度終了の日までに、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
  • ③ その事業年度終了の日までに、その金額を合理的に算定することができるものであること

上記①の「債務が成立」とは、一定の給付をするという債務が契約上明らかになっている場合をいいます。ここにいう「契約」とは必ずしも文書ではなく口頭での契約も入ります。
 次に、上記②の「具体的な給付をすべき原因となる事実の発生」とは、相手が約束した債務を履行したことにより請求権が発生した状態になった場合をいいます。
 例えば、建物を修繕してもらうという契約をすれば債権(請負人側)と同時に代金を支払う債務も発生します。これが「債務の成立」であり、修繕が終了したという「給付をすべき原因となる事実の発生」により初めて支払うべき債務が確定します。
また、その金額を合理的に算定することができることが必要であり、単なる見積もりではなく、合理的根拠に基づいて算定されるものです。この場合、相手から請求書が届いていなくてもあらかじめ見積書などにより金額が明らかであれば合理的根拠に基づいて算定されているものと考えられます。
 また、売上原価は収益に個別に対応しますが、原価を構成する費用のなかには、債務確定基準を厳格に適用すると、適正な期間損益計算が行えないという場合が生じます。
 そこで、法人税基本通達2-2-1(売上原価等が確定していない場合の見積り)は売上原価等が確定していない場合でも、期末にその金額を適正に見積もることができるように定めています。
 【参考】法人税基本通達逐条解説

元国税調査官・税理士 大柳 和二

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