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税理士コラム

税よもやま話 第5回 最近の税務調査に想う2013年05月01日

国税の外に出て、第三者的に立ち位置を変えて税務署の調査を眺めてみると、感じることも多々ありますが、中でも最近気になる税務署の調査が二件ありました。

一つは、非違所得金額7万円の法人税修正申告の慫慂(しょうよう:修正申告を求められること)。もう一つは、立会の依頼がきた時点で調査開始から5ヶ月目に入っていた個人所得税の調査です。

少額な修正申告を求める理由

まずは、前者の法人税修正申告の慫慂についてです。

金額の是非を問うものではありませんが、7万円という少額の修正申告の慫慂は如何なものでしょうか。重箱の隅をつつくような調査、経理上の小さなミスの指摘。このような調査は国税の内部的にも強く戒められてきたものです。

調査の過程においてそのような作業になることもありますが、結果(少額増差所得金額)によっては誤りを指摘し、今後の是正を指導するに留めることも少なくありませんでした。

この様な処理を担当調査官の資質に帰するものとするのは酷かもしれません。担当統括官の指示の結果かもしれないからです。担当統括官も中間管理職として、処理件数、修更正割合、不正発見割合等のスコアメーキングに追われる立場に置かれていることを忘れてはいけません。

昨年の国税通則法の改正で、実地調査の結果、調査した全ての税目および課税期間の中に非違が認められなかった税目や課税期間がある場合には、「更正決定等をすべきと認められない旨の通知」(是認通知書)を送付することとなりました。

従来の税務調査においては、更正には至らないが指導事項があった場合には是認通知書を出す必要がありませんでした。しかし、これからはそれが認められないこととなったわけです。

指令された調査において是認はしたくない。是認通知書は出したくない。というのが調査官の本音です。指導事項があることを理由に是認通知書の作成を免れるという逃げ道がなくなった結果、今後、たとえ増差所得金額が1万円でも更正されることになるのかもしれません。

長引く調査に対する負担

次に、後者の個人所得税の調査についてです。

ある会社の社長が、ご自分の個人申告の調査の件で相談にいらっしゃいました。「6月に税務署が来て所得税の調査に入ったが、5ヶ月も経った現在も調査を続行している。何とかなりませんか」ということでした。

調査は、ある地方都市の税務署の経験豊富な所得税担当の特別国税調査官によって実施されていました。税務署に赴き、担当者に調査における問題点を伺いましたが、疑問点が多数あり、核心を捉えることができずにいるようでした。時が解決するのを待つ調査手法をとっているようにも見えました。

納税者には税務調査と質問検査権の行使に対し、受忍義務が課せられています。この受忍義務は、国税通則法に規定された質問検査権違反の場合の罰則規定、すなわち、拒否した場合は罰せられるという規定により担保されています。そして、調査期間については法律の定めはなく、調査官の合理的な裁量に委ねられています。

しかし、おのずと調査期間には限度があるはずです。調査を受ける納税者の精神的、肉体的、金銭的な負担には大きなものがあります。一般の調査官はそれをよく認識し、効率のよい調査を実施することにより、早期に結論を出すように努力しています。

国税局・税務署も調査着手から3ヶ月超の調査事案については、担当者に報告を求め、早期終結を指導しています。事案にもよりますが、3ヶ月を超す調査を続行するにはそれ相当の理由が必要となります。

幸いこの調査は、私共が立ち会いを開始してからひと月ほどで終了させることができましたが、国税の職場がこれからも納税者の皆様の畏怖と同時に、尊敬を集めるような職場であり続けることを期待してやみません。

税理士 松井 孝榮

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