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税理士コラム

税よもやま話 第15回 我国の家計2014年07月01日

本年度予算による国の歳入は税収50兆円と、国債等の借金43兆円を合わせた93兆円。国および地方の長期債務残高は、26年度末には1010兆円程度になると言われています。

これを個人の家計にたとえますと、「私の年収は500万円。扶養家族も多く私の収入だけでは生計が立たず、毎年の借金が400万円。なんとこの20数年で借金の残高が1億円になってしまいました。どうやって返済していいのやら。誰か教えてください」といったところです。国の財政状況を個人の家計に置き換えてみると何となく実感が湧いてきませんか。

いまや、国民一人当たりの長期債務残高は788万7千円になります(一人当たりの負担額ですから、まだ税金を納めていない赤ちゃんや子供、税負担のない高齢者も含めての額になります)。

国の負債は、自分たちの子や孫たち、将来世代の大きな負担になってきています。4月に消費税が増税されましたが、税金が国庫に入るまでにはタイムラグがあるため、本年度の消費税収は5兆円の増加にとどまります。「本年度予算では、5兆円のうち、2兆9500億円は基礎年金の国庫負担に充て、赤字国債でまかなっていた社会保障費の一部を補うために1兆3000億円を使う。5000億円は待機児童の解消など、社会保障をこれまで以上に充実させるために支出する」と、その使途が示されているようですが。

財政の健全化

財政の健全化のためには税収を増やすと同時に支出を減らす必要があります。

地方議員の定数は2003年からの8年間で39%減少しました。2003年議員定数6万人に対して、今年1月1日の全地方議会の定数は3万6千人に減少しています(地方議員の数が減っても地方行政には特に支障はないように思われます)。

それならば国会議員を減らす。余剰な公務員も削減する。無駄な支出を洗い出して、国の財務内容を改善する。誰でもわかることだとは思いますが。

社会保障費考

巨額な社会保障費の使途も見直す必要がありそうです。本年度予算においては、医療や介護、年金の経費として22.6兆円を計上しています。社会保障費はこの10年間で5割以上増え、初めて30兆円を突破しました。

話は変わりますが、病院に胃婁(いろう)という処置があります。胃瘻とは食物や飲料や医薬品などの経口摂取が不可能または困難な患者に対し、腹壁を切開して胃内に管を通し、食物や水分や医薬品を流入させ、投与するための処置です。治療ではありません。

次の条件の少なくともどれかひとつに合致する場合は、胃瘻の造設は行わない、または、造設済みの胃瘻からの人工栄養投与を中止することとされています。
◾老衰やガンの終末期においては、平穏死・尊厳死の観点から
◾患者本人または家族が胃瘻造設と人工栄養や水分や医薬品の投与による生存を望まず、拒否した場合
◾胃や腸の機能に病気や障害があり、人工栄養を消化吸収することが不可能または困難な場合
◾その他

病院で胃婁を施された患者を何度か目にしたことがあります。多くが寝たきりのお年寄りで、喋ることもできず、意識は混濁しているように見えました。回復の見込みはほとんどなく、会話もできない。そのような病人を相手にした家族と縁者の見舞いの足が遠のいていくのは仕方のないことなのかもしれません。

結果、介護と延命は病院にお任せ。年を取った病人の年金の管理は、将来の遺族にお任せということになっていきます。

氷山の一角、そして微妙な話ではありますが、医療費の無駄遣いにはならないのか、そして、年金の支給はこれでいいのかと考えさせられてしまいます。

かつて大平正芳首相はこう言い残しました。

「子孫に膨大な負担を残してはいけない」

税理士 松井 孝榮

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