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税理士コラム

税よもやま話 第16回 みなし役員2014年08月16日

調査官「社長さんも出張が多くて、奥様も大変ですね」

妻「そうなんです。経理から銀行対策まで、私が一人で取り仕切っているんですよ」

調査官「奥様は自社株をお持ちなんですか?」

妻「株はすべて社長のものですが、社員の私がいなければこの会社は成り立ちませんよ。他の社員は影の社長なんて言っていますけど」

調査官「・・・」

皆様の会社では、社長の親族が社員として在籍していませんか? その社員の方に賞与を支払った場合、「みなし役員」とみなされると、賞与の全額が損金不算入となってしまうケースがあるのは、ご存じでしょうか。

「みなし役員」とは

登記されている役員とは別に、税法上で役員とみなされる社員を言います。みなし役員に該当するケースは大きく分けて次の2通りです。
1.社員以外で相談役や顧問等に該当し、かつ経営に従事している人 (法人税法基本通達9-2-1)
2.社員で「特定株主」に該当し、かつ経営に従事している人

上記の1、2のいずれかに該当する社員は税法上の「みなし役員」となります。

特定株主とは

特定株主とは、判定の対象となる人が次の条件をすべて満たす場合を言います。
1.本人とその配偶者の持ち株割合の合計が5%超であること。
2.本人の属する株主グループ(親族などを含めたグループ)の持ち株割合が10%超であること。
3.株主グループの持ち株割合の1位から3位を合計して50%超となり、本人がその株主グループのいずれかに含まれていること。

たとえば、社長一人で50%超の持株割合で、奥様が社員として働いている場合には、前述の3つの条件を全て満たすことになり、奥様自身は自社株を持っていなくても特定株主となります。

株主グループとは

ここでいう株主グループとは、その株主等およびその株主等の以下に掲げる同族関係者(法人税法施行令4条1項)ならびに、これらの者によって直接・間接に支配される会社をいいます。
i.株主等の親族(6親等内の血族、配偶者および3親等内の姻族)
ii.株主等と婚姻届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者
iii.株主等(個人に限る)の使用人
iv.上記以外で、株主等(個人に限る)から受ける金銭等により生計を維持している者
v.上記i~ivの者と生計を一にするこれらの者の親族

「経営に従事」しているとは

法人の主要な業務執行の意思決定に参画することをいい、○販売計画○人事計画○設備計画などの経営方針に参画して、自己の意思を表明し、反映させることを指します。
たとえば、銀行の担当者との窓口となり何らかの意思決定をしていたり、採用を担当している場合などは、経営に従事しているとみなされることがあるので注意が必要です。

みなし役員に該当したらどうなるか

もし、みなし役員に該当すると、給与・賞与は全て役員と同様の扱いを受けます。役員給与に関しては、「定期同額給与」など限られたケースしか経費になりません。
妻を社員として賞与を支給している会社は、特に注意が必要です。妻が「みなし役員」に該当しなければいいわけですが、たとえば「形式基準」に該当しないように妻に5%以上の株を持たせないようにしても、税法上、「実質基準」により社長の妻を役員とみなすことが多いのです。
「実質基準」は、業務執行の権限を有する者を役員とみなす基準です。要するにこれに該当していないことを税務署に主張できればいいのですが、それには社長の妻を使用人としての職務にのみに従事させることが重要で、役員の肩書き等を付けないように気をつける必要があります。

「口は災いの元」。誘導尋問にはくれぐれも気を付けましょう。

税理士 松井 孝榮

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