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税理士コラム

経営者は税理士事務所に何を期待しているのか2018年07月10日

 先日、一人の青年が当税理士法人を訪れました。某ホテルに勤務する40代のサラリーマンです。
 彼は、会社を辞めて起業することを決意しました。ついては新しく設立する会社の税務を当社に依頼したい、ということで見えたのです。
 会社を辞めて、起業する。とてもエキサイティングなことだと思います。それまで抱いてきた夢の実現に向けて明確な一歩を踏み出すのです。わくわくするのが当然です。
 一方で、不安もあるでしょう。
 事業はうまくいくのか。すべりだしの成功は見込めても、5年後10年後はどうなるのか。会社員を辞めて経営者になるということは、そうした不確定要素をすべて自分で背負い込むということです。不安な思いもまた当然です。
 しかし不安は、それだけではありません。起業する新米経営者を、いやすべての経営者の心をいつも悩ませている問題があります。
 それが「税金」なのです。
 中小企業の経営者は、税理士事務所を頼りにしています。頼れるのは、顧問の先生しかいないのです。
 しかし経営者は、税理士事務所から満足のいくサービスを提供されているのでしょうか。今回は、税理士事務所の役割について、あらためて考え直してみたいと思います。

税金のストレスは経営者の運命?

 起業を目前にした青年も、私の前でこれから新しい会社が支払うべき税金について、さまざまな不安を口にしていました。
 それは、40年以上も税理士として、また経営者としてやってきた私からみれば些細なことです。しかし彼にとっては、不安でいっぱいなのです。
 「稼いだ以上のお金まで取られることはないから、安心してどんどん稼いでください!」
 私はそう言って、笑いながら彼の肩を叩きました。しかし、じつは彼の気持ちもよくわかるのです。
 経営者というのは、何年やっても税のストレスから解放されません。引退して会社を後継者に譲っても、相続税など税金の心配が大きくなっていきます。税金というのはオギャーと生まれてから息を引き取るまで、いや亡くなったあとまで、どこまでも付いて廻るものなのです。会社をつくった人なら、なおさらです。
 税金という制度があるかぎり、それは仕方ないことかもしれません。
 しかしと、私はふと思うのです。
 税金に不安を抱えているたくさんの顧問先企業に対して、いままで税理士事務所は満足していただけるサービスを提供してきたのだろうか。24時間いつも税金の不安に駆られている経営者から、税金に関するいっさいのストレスをなくしてあげようという努力を、税理士事務所はこれまでに少しでもしてきたのだろうか。
 私は、きわめて疑問に思っているのです。

潜在的ニーズに応えていない

 経営者は、税法の細かいところまで勉強して起業したわけではありません。だから、税金のことはとにかくすべて専門家にお願いしようと考えて、税理士事務所を訪れるのです。
 しかし、税理士事務所の所長先生に「先生、よろしくお願いします」と頭を下げたとき、経営者は何をお願いしているのでしょう。残念ながら、所長先生はその本質をわかっていません。
 税務の依頼に訪れた経営者に対して所長先生は、会社の職種、資本金、従業員数などを聞き、帳簿作成など必要な業務と自分たちが提供するサービスを説明するでしょう。そして月2万円なり3万円なりの報酬で契約書を交わします。実際のサービス提供も、法人税周辺だけなのです。
 これは少しおかしくないでしょうか。まるで、お客さんが欲しい商品をお店の人が勝手に決めつけて売っているようなものです。税理士事務所というのは、お客様に対して、一方的に自分たちのルーチンワークを押しつけているだけなのです。
 たしかに、経営者は決算と申告を主に依頼したいと思って来ているのかもしれません。法人税は毎年必ず発生するものですし、帳簿の作成や決算は経営のためにも不可欠です。
 しかしそれはあくまでもお客様の「顕在的なニーズ」にすぎません。
 経営者は、メインにやってほしいのは決算と申告業務だけど、もし何か税金のことで問題があるようなら解決してほしい、どのような問題があるかわからないけれども、もしあったらお願いしたい、経営者はそう言って頭を下げているのです。それが税理士事務所にはわかりません。
 いま困っているのに気づいていない、あるいは近い将来困ることになるけどいまわかっていない、そこに税理士事務所のお客様である経営者の潜在的ニーズがあります。それが、じつは経営者の最大のストレスになっているわけです。そうした顧問先企業の潜在的ニーズをすべて無視してきたのが、これまでの税理士事務所だと私は思います。

99%の事務所は、税理士が一人

 「税理士事務所はそういうところ」
 そう思い込んでいる経営者にも問題があるかもしれません。ただそれも、税理士事務所の責任です。これまで何十年も、税理士事務所の提供するサービスは決算と法人税周辺の仕事だけにとどまっていたからです。
 その実態は、いまの税理士事務所の体制を見れば一目瞭然でしょう。
 たとえば、都内に実在するA事務所は、800社のお客様企業を持ち、従業員は46名います。その46名のなかに税理士が何人いるかというと、なんと所長先生たった一人なのです。
 あるいは都内のB事務所は、お客様の数が2000社にのぼる巨大な税理士事務所で、従業員は150名を擁しますが、税理士の資格を持つ者は10名だけです。
 これはA事務所、B事務所に限ったことではありません。いま日本には3万から4万の税理士事務所があると言われていますが、その99パーセントが税理士は所長先生一人だけなのです。
 経営者は、税務の専門家である税理士がいるからこそ、自分がわからない税金のことをすべて税理士事務所に任せているはずです。税理士事務所は、お客様を裏切っていると言えないでしょうか。

高額でも価値ある専門サービスを

 なぜそうなっているかというと、税理士事務所が半世紀前とまったく変わらない発想で現在も税務サービスを提供をしているからです。使う道具はソロバンからIT機器に発達しましたが、内容は何一つ進歩していないのです。
 税法は年々複雑化していますし、世の中はグローバル化がどんどん進んでいます。いまや中小企業も、さまざま形態をとりながら、部分的に海外との取引を行っているところは珍しくありません。
 世の中も中小企業も時代とともに当たり前のように変化を遂げているのに、税理士事務所だけは漫然と旧来の「決算と法人税申告」のサポートしかやっていないのです。
 サービス内容はどこの税理士事務所も同じですから、業界では自然に「価格競争」が起こってきます。税理士はたくさんの職員を雇い、格安の顧問料でより多くのクライアントを獲得する、そのことばかり熱心なのです。お客様に満足していただけるサービスなどそっちのけです。
 お客様の見えないところにある重大なニーズ(問題)は、なかなか顕在化しません。経営者は、より専門的で価値の高いサービスを、高額のフィーを支払ってでも得たいという動機さえ、失ってしまうのです。
 結果として、税理士事務所にお金を払いながらも、経営者はなぜか税金のストレスから解放されない毎日を過ごしていくことになるわけです。

社長の税金ストレスはゼロにできる

 税理士は専門家です。素人のお客様に対して専門的な知識をもとにサービスを提供しています。それは医師も同じですが、世の中の医療サービスと税務サービスにはとても大きな違いがあるように思えます。
 地域のクリニックの医師は、広く浅く患者さんを診ていきます。そしていろいろな病気を見つけ、治療していくわけです。すると、なかには自分の手に負えない専門的な病気も現れます。そのときクリニックの医師は、その病気を専門的に勉強し、その患者さんばかり診ている専門医に、自分の患者さんを紹介します。患者さんがより正しい診断と治療を受けられるように、医療サービスをバトンタッチするのです。
 ところが税理士事務所は違います。
 税理士のほとんどは法人税やその周辺の問題については専門家ですが、ほかの税法、たとえば相続税のことは必ずしも詳しくありません。しかし、顧問先企業の経営者に相続税が発生して相談を受けたとき、自分は専門家ではないのに、相続税の申告業務をすべて請け負ってしまうのです。これは内科医が無茶をして手術を行うようなもので、経営者はよけいな相続税を払ってしまうかもしれません。それでも「税の専門家」と思われているので、所長先生の失敗は気づかれません。
 医療には、患者さんがベストの治療が受けられるような連携システムがあります。当然のことだと思いますが、それが税理士事務所業界にはないのです。
 「経営者は死ぬまで税金のストレスに悩まなければならない」というのは、じつはウソです。
 税理士業界がきちんと連携すれば、あるいは本当に必要なサービスを提供しようと追求すれば、お客様である経営者の税金ストレスは完全に「ゼロ」にできるのです。それは決して難しいことではありません。なぜなら、経営者の税金に関するニーズのすべてに応えられる専門家が、私たちの業界にもいるからです。

税理士事務所サービスに「革命」を

 昨年9月から「オーナー社長の税金ストレスからの解放」という趣旨で、新しいサービスをスタートさせました。会社のすべての税務はもちろん、経営者自身の人生に関わるすべての税金ストレスをゼロにする、というものです。税務調査が入っても、社長は挨拶だけで終わり。過去のことも将来のことも、こと税金に関してはすべてスペシャリストが目配り手配りし、中長期にわたって準備を整えていきます。すべてお任せなのです。
 スタートしてみると、私が思った通りでした。全国の中小企業経営者に大反響があり、大きな満足と喜びを得ていただいています。私ども税理士のスペシャリストたちも、お客様からの感謝の声に、いっそう張り切っています。
 どのような職業でも報酬をいただくことは大きな喜びですが、それよりも大きい喜びは「お客様に心から満足していただけること、感謝していただけること」です。そのことを私はいま、72歳になって初めて全身で実感しています。税理士事務所を43年間やってきて、ようやく「自分はこの仕事をやるためにこれまで税理士事務所を続けてきたんだな」と心から思えるのです。
 思えば、自分の生き方、生活についてもそうでした。自分の生活を反省し見直して、自分を変えることによって、とうとう私の脳に発生した転移ガンはすべて消えたのです。この年齢になってようやく、どう生きるかということがわかったのです。
 こうしたことに気づくのに、私は40年以上もかかりました。このことを強く受け止め、その思いを必ずや後継者に伝えていきたいと考えています。そして今後、私たちの仕事が税理士事務所の提供するサービスに大きな革命をもたらすきっかけになってほしいと、願っているのです。

創立者 野本 明伯

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