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税理士コラム

税制改正特集 法人税編2015年02月16日

今回の法人税改正のポイントは、企業収益の拡大による従業員の賃金増加と、地方における雇用者の増加を支援するための内容になっています。
主な改正内容について、「成長志向に重点を置いた法人税改革(賃金増加)」と、「地方拠点強化税制の創設(雇用者の増加)」の2項目に分けて解説していきます。

◆成長志向に重点を置いた法人税改革

(1)法人税率の引下げ
平成23年度税制改正で30%から25・5%に引き下げられましたが、さらに、平成27年4月1日以後に開始する事業年度から23・9%に引き下げられます。しかし、これでも2014年度の世界法人税(法人実効税率)ランキングでは、順位が2位から5位ぐらいに下がる程度です。
なお、中小法人等の年800万円までの所得に対する軽減税率15%の適用については、平成29年3月31日までの間に開始する事業年度まで延長されます。

(2)欠損金の繰越控除制度等の見直し
イ.大法人の繰越欠損金に限っての措置ですが、繰越控除する事業年度の控除限度額については、平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度では控除前所得の100分の65相当額に、平成29年4月1日以後に開始する事業年度では控除前所得の100分の50相当額に、段階的に引き下げられます。
なお中小法人等については、現行どおり、所得の金額まで控除できます。
ロ.大法人、中小法人とも、繰越控除の対象となる青色欠損金の繰越期間は、9年以内から10年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額とされます。

(3)受取配当等の益金不算入制度見直し
所有する株式の区分について、「完全子法人株式等」、「関係法人株式等」、「その他の株式等」および「非支配目的株式等-に細分化するとともに、課税割合等が下表のとおりとなります。
(しかし、3分の1超の保有割合とはどんな理屈でしょうか。3分の1超を保有した場合、特別決議が必要とされる合併などの組織再編、事業の全部譲渡、新株などの有利発行の決議事項を単独で阻止できるこということから、支配力を一段階あげたということでしょうか)
また、公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配の額については、現行の2分の1または4分の1課税とする煩わしい区分判定がなくなり、その全額が課税となります。

(4)雇用者給与等支給額が増加した場合(所得拡大促進税制)の税額控除
平成25年度改正において、企業によるベースアップなど、従業員全体について給与等の支給額の増加を促す目的として創設された制度ですが、さらに、企業が収益力を高め、賃上げにより積極的に取り組むことを促すため、適用期限を平成28年3月31日から平成30年3月31日までと2年間延長するとともに、平成30年3月31日までに開始する事業年度における雇用者給与等支給増加割合は次表のように緩和されます。
ただし、雇用促進税制(雇用者の数が増加した場合)の適用を受ける事業年度は本件の適用がありません。

◆地方拠点強化税制の創設

(1)投資減税創設
これは、地域再生法の改正における地方拠点強化実施計画(仮称)の承認を受けた法人が、「計画」承認の日から2年以内に、その「計画」に従って支援対象地域に一定の規模以上の建物及びその附属設備並びに構築物を取得して事業の用に供した場合には、その取得価額の15%の特別償却、またはその取得価額の2%の税額控除(平成29年3月31日までに承認がされた場合は4%)の選択適用ができる制度です。
さらに、その計画が現在法人のある特定地域(東京23区など)から支援対象地域への移転の場合は、その取得価額の25%の特別償却、またはその取得価額の4%の税額控除(平成29年3月31日までに承認がされた場合は7%)と、割増しになります。また、「一定の規模以上のもの」とは、一の建物およびその附属設備並びに構築物の取得価額の合計額が2000万円以上(中小企業者にあっては1000万円以上)のものをいいます。
ところで、12年前に、東京一極集中の是正を図るため首都機能移転の議論がなされ、その後は国政の場で議論されなくなり、平成23年には国土交通省の担当部署が廃止されたという経緯がありますが、今回の地域再生法改正を踏まえて、再度、首都機能移転の議論が復活するのでしょうか。

(2)雇用促進税制の特例
現行の雇用促進税制の特例として、地域再生法の改正法施行の日から平成30年3月31日までに地方拠点強化実施計画(仮称)の承認を受けた法人が、「計画」承認の日から2年以内の日を含む事業年度において、その「計画」に従って移転または新増設をした支援対象地域の増加雇用者数に応じ、次のとおりの税額控除ができます。
①移転又は新増設(特例1)
現行の雇用促進税制の要件のすべてを満たす場合は、法人全体の前期比雇用増を上限として、移転または新増設した地方拠点の前期比雇用増に50万円を乗じた金額の税額控除ができます。要件のうち、法人全体の雇用者数が前期比10%以上の増加の要件以外を満たした場合には、地方拠点の前期比雇用増に20万円を乗じた金額の税額控除ができます。
②移転型の計画(特例2)
地方拠点強化実施計画がその法人のある特定地域(東京23区など)から支援対象地域への移転の場合は、地方拠点の増加雇用者数に30万円を乗じた金額の税額控除が加算されます。ただし、当該地方拠点の雇用者数又は法人全体の雇用者数が前期比で減少した事業年度以後は適用されません。
また、上記(1)及び(2)による控除税額は、当期の法人税額の30%から、現行の雇用促進税制による控除税額と上記(1)の控除税額の合計額を控除した残額が限度となります。

税理士 大柳 和二

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